「祖父との思い出を胸に叶えた畜産農家の夢」(後編)

投稿日:2022年1月17日 更新日:

プロローグ

亡くなった祖父の背中を追い、鹿児島で畜産農家としての独立を目指していた大山貴之さん。自治体の就農希望者向けの支援制度を活用しようとするも、畜産会社で2年経験を積んだ大山さんは申請要件からはずれてしまい制度を利用することができない。悩んだ末、ひとまず大阪に帰ることに。それは夢を諦めての帰郷ではなく、独立に向けて少しでも資金を貯めるための選択だった。

「祖父との思い出を胸に叶えた畜産農家の夢・鹿屋市に住む大山貴之さん」(前編)

夢への想いは静かに燃え続ける

「鹿児島で一人暮らししながら家賃払ってお金を貯めるよりも、なるべく生活費をかけずに実家のある大阪でちょっとでもお金を貯めようかなと。何か糸口が見つかればなあと思いつつ帰ったんですが、30歳手前でやりたいことがあってフリーターって、なかなか思ったようにアルバイト先も見つからず。でも何もしないわけにはいかないから、とりあえず働けるところでアルバイトをしながら、移住定住のイベントがあるとそれに参加したりしていました」

大阪でも農畜産業関連の移住定住イベントがあり、鹿児島の担当者に改めて状況を話して相談したことがあった。いろいろと動いてもらうも、結果はやはり変わらず。年齢的に、周りでは結婚したり、家を建てたり、会社で役職に就いたりといった話も聞こえてくるなか、これからどうするべきか悩んだという大山さん。

「俺は何してるのかな、このままでいいのかな、年齢的にも就職した方がいいのかなとか、相当考えた。諦めたわけじゃない、やれるだけのことはやって、制度的に無理だったんだからしょうがないと自分に言い聞かせられないこともなかった。でも大阪に戻ってまだ1年。まだ何かできるんじゃないかと考えたり」

「祖父との思い出を胸に叶えた畜産農家の夢・鹿屋市に住む大山貴之さん」(前編)

そんなとき、鹿屋の畜産会社で働いていた時からお世話になっていた知人から、鹿屋市で畜産経験の有無に関係なく受けられる研修・独立支援の制度があることを知らされた。教えてくれたのは前職を退職後も近況報告や相談をしていた知人で、大山さんが大阪でフリーターをしているあいだも鹿屋で情報を集めたり、方策を当たってくれたりしていた。

連絡を受けてすぐさま鹿屋市に向かった大山さん。詳細を聞くと知人が教えてくれたその制度は、研修後に鹿屋市で独立することを条件に補助金を受けられるもので、独立を目指す大山さんにピッタリのものだった。

独立に向けて動き出す

研修は1年間。親牛が50頭ほどいる一般農家での研修で、牛舎清掃や削蹄、分娩など肉用牛の飼養管理全般だけでなく、農場の水道・電気設備などについても学んだほか、受け入れ先農家の厚意で他の畜産農家の牛舎を見学させてもらったり、経営者の生の声を聞いたりもできた。

「鹿児島で最初に就職した畜産会社は牛に慣れた2年間。鹿屋市の研修は具体的に独立というものを想像できた1年間でした」

と大山さんは振り返る。研修を終えると独立のための準備。牛舎については空いている物件を鹿屋市が紹介してくれたり、研修でお世話になった農家が紹介してくれたりといった縁でいくつか見てまわり、周囲にアドバイスや協力をもらいながら現在の牛舎に決め整備した。そして2021年1月、晴れて牛の繁殖農家として独立を果たした。親牛を23頭買い付け、これまでに子牛が4頭出生。現在は27頭を育てている。

「祖父との思い出を胸に叶えた畜産農家の夢・鹿屋市に住む大山貴之さん」(前編)

鹿屋での暮らしとこれから

自動車メーカーの営業から牛の繁殖農家へ、そして大阪から鹿児島へと、業種も暮らす環境も大きく変化した大山さん。慣れない場所で生活するにあたって鹿児島で最初に職を探したとき、実は働いている人の年齢層も会社選びのポイントにしていたという。

「ここだったら同世代で友達になれるかなとか、仕事終わりに一緒に飲みに行ったりできるかなとかっていう可能性も感じて選んだところもありました。それが功を奏したというか、今でも前の会社の人には飲みに誘ってもらったり、遊びに連れて行ってもらったり、独立したら喜んで遊びに来てくれたり。そういう関係が続いています」

牛舎はのどかな鹿屋市の郊外にあるが、住まいは鹿屋市街地。夜遅くまで開いている大型の店舗もあり買い物などには困ることもないそう。一方で、生活するうえで車が必需品ということには衝撃を受けたという。

「大阪では車がなくても十分生活できて、周りの友達も車にお金を使うくらいなら趣味に使うというくらいの認識。だから生活するうえで車が必須という環境は衝撃でした。代行もこっちに来て初めて使いましたね」

と笑う。現在は牛を育てながらアルバイトもして生計を立てる日々。アルバイトは牛飼い仲間の紹介でセリの作業員をしたり、他の農家の手伝いをしたりしている。当面の目標はまず仕事を軌道に乗せ、畜産農家としての仕事だけでしっかり生計を立てられるようになることだ。
畜産会社で働いていた時や研修中とは違い、独立するとすべてが自分の判断。例えば牛の様子がいつもと違う時など、どう対応するべきか悩むことも今はまだたくさんあるが、先輩農家や獣医にアドバイスをもらうなどして少しずつ経験を積んでいる。

「いろんな方にお世話になって助けていただいて独立まで来られた。けれど社会人に例えるとまだ入社したばかりの段階で、さあここからだというところ。仕事が大きくなるのも小さくなるのも自分次第でもう本当に言い訳はできない。自分がどこまでできるのかいろいろチャレンジしてみたい部分もあります」

「祖父との思い出を胸に叶えた畜産農家の夢・鹿屋市に住む大山貴之さん」(前編)

今年2月には初めて子牛を出荷する。そして初産での出産ラッシュも迎える予定だ。

「初めて生む時がいちばんリスクが高いので、そこを無事に生ませること、生まれてくる子牛をすべてこぼすことなく生ませきる。それが今いちばんの目標です」

大山さんの繁殖農家としての挑戦は、今まさに始まったばかりだ。

大山さんのかごしま暮らしメモ

かごしま暮らし歴は?

4年目(2年目と3年目の間に1年間大阪へ帰郷)

Iターンした年齢は?

26歳

Iターンの決め手は?

畜産農家をしていた鹿児島の祖父が他界したこと

鹿児島や鹿屋市の好きなところ

人との距離感が近くあたたかい。興味を持って関わろうとしてくれる

かごしま暮らしを考える同世代へひとこと!

最近では移住や定住の施策や情報も多いですが情報を集めるばかりじゃなくて、やっぱり動いてみることが大事。動かなければ縁や運というものは生まれないと思います。一生住まないといけないとか重く考えず、2泊3日のお試し移住体験など気軽に利用して、まずは動いて土地を肌で感じてみるのが大事だと思います。

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