自転車から見る鹿児島は、もっとおもしろい!(前編)

投稿日:2020年10月26日 更新日:

プロローグ

いま、鹿児島の自転車好きから注目を集める店がある。鹿児島市谷山中央の幹線道路添いに店を構える「VOLCANIC CYCLE (ヴォルカニック サイクル)」だ。
 店主の仁禮健太郎さん(43歳)は東京生まれ、東京育ち。2018年に妻の故郷である鹿児島県南さつま市に家族で移住してきた。鹿児島では珍しいスポーツバイクブランドを取り扱い、毎日の通勤に使える実用性と、休日のロングツーリングにも対応する走りの良さを併せ持つモデルが多いのが特徴。メカニックのプロフェッショナルでもあり、お客さんの希望に合った走りや乗り心地、使い勝手を高めるカスタマイズも得意とする。
 そんな仁禮さんだが、移住前は鹿児島での開業は想定していなかったという。東京での暮らしから、移住そして開業までのいきさつや思いを聞いた。

インタビュー:瀬戸口奈央 撮影:高比良有城 取材日2020年10月

都心を駆けるメッセンジャー

「鹿児島は圧倒的に車社会ですよね。駐車場が広くて、どこへ行くにも車が便利。子ども連れだと特に助かるなと思います。逆に車がないと生活に困る方もいらっしゃいますよね。でも、東京での生活だと、バスも電車も人が多いし、道路は渋滞してたり。移動手段として利便性と手軽さ、自由さを求めていくと、自然と自転車にいきついて、普段からよく乗っていました」

そう振り返る仁禮さん。単なる移動手段だった自転車に、走りを追求するほどハマったきっかけは、体を動かすことが好きで始めた自転車便(メッセンジャー)の仕事だった。

依頼を受けてオフィスからオフィスへ。その走行距離は1日60〜80㎞にもおよび、アスリート並みの運動量をこなす日々だった。「街を走ること自体も楽しかったですね。だんだん、もう少し楽に、速く走れる自転車にしたいと、自分でも自転車をいじるようになって、どんどんのめり込んでいきました。知り合いに誘われて、週1、2回自転車屋でのアルバイトも始めて。24歳から約6年続けてきましたが、走り過ぎで、膝にケガを抱えていたし、そろそろ違う仕事をしてみてもいいのかなという気持ちも芽生えてきていました」

自転車から見る鹿児島は、もっとおもしろい!(前編)

スポーツバイクのメカニックへ転身

30歳を目前にして、アルバイトでもお世話になっていたサイクルショップ「ブルーラグ」へ転職。当時から東京のスポーツバイクカルチャーを牽引する、自転車通が集う店だった。仁禮さんも立ち上げから関わっており、ここで接客はもちろん、豊富な商品知識、整備の技術も基礎から身につけ、自転車をお客さん好みの仕様へ組み上げられる、腕利きのメカニックとなった。

「本当にいろんなお客様と出会い、大好きな自転車のことをたくさん学ばせてもらいました。自転車を提供する立場になって、一番変わったのは、安全への意識。ボルト1本の緩みで大事故につながることもあります。何度もチェックして、お客様がもっと気持ちよく乗ってもらえるように、いろいろと気を配るようになりました」
鹿児島への移住が決まるまで、約10年間勤めたこの店での経験が、現在の「VOLCANIC CYCLE」の基盤となっている。

自転車から見る鹿児島は、もっとおもしろい!(前編)

移住から開業へ、心を決めたツーリング

プライベートでは、33歳で結婚。まもなく、奥様が実家の都合で、故郷である鹿児島と東京とを行き来する生活が続いたことを受け、2018年、一家で奥様の実家がある南さつま市へと移住することを決めた。

「子どもたちのことも考えて、その方がいいと思いました。鹿児島へは何度か遊びに行っていて、食べ物はおいしいし、人は優しいし。妻の実家の南さつま市は自然もあってのんびりしていて、良い環境だなという印象でした。でも、いざ暮らすとなると、正直8割以上ってぐらい、もう不安しかありませんでした。仕事を見つけなきゃいけないけど、今まで自転車しかやってきてない僕が、鹿児島でどんな仕事ができるんだろうって...」(笑)

移住後すぐにハローワークに登録して、職探しを開始。不安や焦りの中、ちょっと一人の時間ができたとき、相棒の自転車でツーリングに出掛けるようになった。

「僕が住んでいる加世田から、笠沙(かささ)や坊津(ぼうのつ)といった東シナ海側の海沿いの道を走ってみたんですね。そしたらロケーションがすごく良くて、感動しました。ほかにも、霧島だったり、大隅の方だったり、いろんな景色を見ながら走っていると、なんか鹿児島と自転車ってすごく合うかもしれない。自分がやりたい自転車の楽しみ方に実はフィットする場所なんじゃないかって思えたんですよね」

県内あちこちへツーリングに出掛けては、見たことのない鹿児島の景色に出会った。そんな体験のひとつひとつが、心の中の不安をぬぐい、開業への思いを後押ししていた。開業準備をすること約8カ月、2019年3月にオープンを迎えた。

自転車だから見えるまちの魅力

店ではお客さんと県内のお勧めツーリングルートの情報交換をすることもしばしば。行きたい場所がたくさんある、と目を輝かせる。

「僕は、息もあまり上がらないくらいのペースで、景色を眺めながら走るツーリングが好きです。美味しそうだなとか、気になるお店を見つけたら立ち寄って、食べたり、休憩しながらのんびり行きます。
自転車だと、車のスピードでは見逃してしまうものにも、たくさん出会えるんですよ。それは海でも山でも、街なかでも。
僕自身も、実際に鹿児島でツーリングをしてみなかったら、おそらく開業していなかったかもしれません(笑)。自転車だから発見できる鹿児島の魅力って、地元の人にとっても、まだまだあると思います。 こういう楽しみ方、遊び方があるんだって、もっと知ってもらいたい。このVOLCANIC CYCLEが、自転車に興味を持つきかっけになれたら嬉しいですよね」と、笑顔を浮かべた。

後編に続く

-南さつま市に住む仁禮健太郎さん, 移住者インタビュー動画, 南薩, 動画アーカイブ, 移住者インタビュー
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