プロローグ
インタビュー:満崎千鶴 撮影:高比良有城 取材日2020年7月
情報を、"得ていた"環境から"取りに行く"環境へ
田原さんの子どもらが通う田代小学校は、「誰もがどこかで何かが一番」を合言葉に、体力や人間性・知識の調和に重点をおいて教育活動を進めている。生徒数はひと学年十数人。決して大きな学校とは言えないが、だからこそひとりひとりの個性を大切に育む。
「錦江町に帰ってきてから子どもたちは明るく活発になりました(笑)都会で広い世界を見ていたはずなのに、不思議とこちらに戻ってきてからの方が広い世界を見るように。例えば留学してみたい…とか。パソコンを勉強したり、六法全書の子供バージョン『こども六法』を読んでみたり。お金のことにも興味を持ち始めて、ファイナンシャルプランナーが子供向けに出しているお金の本を読み始めたり(笑)望まなくても広い世界が見えていた環境から、望まないと見えない環境に変わったことで、積極的に学ぶようになったようです」と子どもたちの成長を嬉しそうに話す夫の康隆さん。
「結婚してからは仕事が忙しくて子供たちと触れ合う時間もなかったけれど、こちらに引っ越してきてからは自由な時間が増えて、みんなで過ごす時間が増えました。錦江町には海もあり、山もあり川もあって。休日は家族みんなで広大な自然を歩いたり花瀬川で遊んだり!すっごく冷たくて気持ちがいい川なんです」と充実した日々を語る奥さま。
働き方や暮らし方の変化は、家族の絆をより深める大きなキッカケとなったようだ。
遊び相手は大自然
福岡にいる頃、田原さんご夫婦の趣味は映画鑑賞や食事巡りだったそう。
しかし、錦江町へ引っ越してから妻の麻里子さんは『普通自動二輪免許(中免)』を取得した。大型二輪免許を持っているご主人と共にツーリングに出かけるのがこの町で暮らし始めた2人の趣味。
「お天気の良い朝、鹿屋の海沿いを主人と一緒にバイクで走って、朝食に持っていったサンドイッチを食べて帰る。ただそれだけのことなのに、とても気持ちが良くて最高なんです!今は残念ながら自分のバイクは手放しちゃったけれど、いつかもう一度自分のバイクを!と思っています!」と麻里子さん。
「いやいや!レンタルでいいよ!(笑)」と隣で笑うご主人の後ろにまたがり2人で出かける。
そんな休日の過ごし方も、錦江町が与えてくれる美しい自然があるからこその事だろう。
求められるもの、与えるもの
「これからは私たちのような働き方がどんどん増えていくという実感はあります。今は色々なものがAIに取って代わられる時代なので、パソコンやタブレットの利用は必須になってくるのではないでしょうか。都会と違って田舎はやっぱりITリテラシーが若干低いと感じることも…。田舎であればあるからこそ、もっとそこを充実させて欲しいと思います。自分たちの働き方を発信することで、これから時代を作っていく子供たちにもITリテラシーを身に付けていってほしいと思っています!」と話す麻里子さん。
「地域の方たちの夢を応援することで、この町で暮らし続けることへの自信や安心感を与えていきたい。そうすることで、いつかあの頃の自分のように“地元に帰ってきたい…”と夢見る人たちに、“帰っておいでよ!”“この町の未来は明るいじゃん!”と迷わず言える環境を築いていくことができるはずだから。ライフプランナーという人生設計をする仕事を通して、これからの子どもたちにも明るい将来像を描かせることが出来るはずだから」と康隆さん。
新型コロナウイルスの拡大により、暮らしや働き方そのものの見直しが世界中で検討される中、錦江町で暮らす田原さんご夫妻の“リモートワーク”という働き方は、私たちの良きお手本となる気がしてならない。
田原さんご夫妻の鹿児島暮らしメモ
かごしま暮らし歴は?
6年目です。
Iターンした年齢は?
康隆さん30歳・麻里子さん31歳
U•I•Jターンの決め手は?
生まれ育ったこの町が好きだったから
暮らしている地域の好きなところ
康隆さん:地域の人たちがみんな温かく前向きなところや何かをしようとする時、とても熱量があるところ 麻里子さん:星と大自然
かごしま暮らしを考える同世代へひとこと!
康隆さん:都会から帰ってきたら、不便に感じることもたくさんあるけれど、“住めば都”田舎でもネット環境が整っているので、困らずに生活することが出来ます!経済的な不安もあるかも知れませんがまずは恐れず帰ってきて欲しい!
麻里子さん:引っ越してきて住民票を役場に提出したときに、“引っ越してきてくれてありがとう!”と言ってもらえたのはこの町が初めてです!地域の方たちはみなさんとても温かい人たちばかりなので安心して戻ってきてください!