「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

出水市 二拠点生活で、心豊かな暮らしを(前編)

投稿日:2021年3月12日 更新日:

プロローグ

鹿児島市から車で約1時間45分。日本最大級の出水麓武家屋敷群や日本一のツル飛来地として有名な出水(いずみ)市。車を走らせると目に映る石積みの街並みは情緒を感じる。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

毎年10月中旬から12月頃にかけて、1万羽を超えるツルが渡来する

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石積みの美しい街並み

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

国の重要伝統的建造物群保存地区に選定される出水麓武家屋敷群の牛車

今回は、生まれ育った出水市と東京で二拠点生活を送る井町直紀さん・美穂さんご夫婦の紹介。井町さんは今、どのような暮らしをされているのか。お話しを伺った。

インタビュー:満﨑千鶴 撮影:高比良有城 取材日:2021年2月

ステンドグラスとの出会い

空には分厚い雲がかかり、時よりチラチラと雪が舞う2月某日。取材先であるアトリエ(Atelier naori)に到着すると、真っ赤な傘を手に「遠いところまでありがとうございます!」と笑顔で出迎えてくれたのは、妻の井町美穂さん。美穂さんに案内され、アトリエに入ると夫の直紀さんが熱心に何かを覗いている。
「実は今日、県下一周駅伝で甥っ子が走っているんです(笑)」
直紀さんは、頑張る甥っ子の現在地をiPadで追っていた。
挨拶を終え、インタビューの準備に掛かると緊張して少しはにかむ直紀さんに、「大丈夫です!力を抜いてリラックスしてください(笑)」と声を掛けインタビューは始まった。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

直紀さんは高校を卒業するまでの18年間、生まれ育った出水市で過ごし大学進学を機に上京した。現在の仕事となる“ステンドグラス”との出会いも、大学に在学中のことだったそうだ。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

美しいステンドグラスのランプ

「もともとステンドグラスに興味があった訳ではなく、学生時代フランスに旅行に行った時にふらっと入った大聖堂で初めてステンドグラスを見て心奪われました。窓にはめ込んであるステンドグラスに陽が入り、床に映る美しい光…。“あ〜…なんて綺麗なんだ…”と。私はその頃フランス語なんて全然話せなかったけれど、気がつけば隣に座るおばあちゃんに“綺麗だね〜…綺麗だね〜…”と話しかけていました。日本語で(笑)」と笑う。
当時、ステンドグラスの知識や技術は何も持ち合わせていなかったけれど、独学で必死に学んだ直紀さんは、大学の卒業制作で初めてステンドグラスを作った。

技術取得のため、本場フランスへ

大学を卒業後、印刷会社にてグラッフィックデザインを担当。その後デザイン事務所でデザイナーとして活動していた直紀さん。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

美穂さんとの出会いもこの時だった。美穂さんはスペースデザイナーとして店舗や展示会のブースデザインなどの造形に加え、現場管理も行っていたという。とてもハードな生活で、“終電や泊まりも日常茶飯事だった”と苦笑いを見せる。
そして2000年、直紀さんはステンドグラスの技術を学ぶために本場フランスへと留学。
「もともと私は、日本の伝統工芸に興味があったのでステンドグラスは身近なものではありませんでした。当時お付き合いしていた主人が、フランスに修行に行っている時、今がチャンス!と何度か私も足を運び、そこで本場のステンドグラスを見て、“あ〜!これか〜!”と私も心を持って行かれました(笑)」と笑う美穂さん。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

フランスでの本格的な修行を終え、帰国後、結婚。東京にアトリエ(Atelier naori)を開業した。アトリエでは制作と並行し、教室やワークショップも行っている。

二拠点生活のスタート

東京のアトリエではたくさんの生徒さんにも恵まれ充実した生活を過ごしていた井町さんご夫婦だが、鹿児島で生活する両親のことを考え、2018年に出水市に移り住んで来た。と言っても、完全にUターンした訳ではなく、月の1/3を東京、残り2/3を出水市で生活している。いわゆる“二拠点生活”ってやつだ。「基本的に制作活動はアトリエに籠もりきりで行うので、東京に居ても鹿児島にいても同じなんですよね(笑)。子どもの頃は正直、いろんな“物”や“情報”がある東京に憧れもあって、外に出たくて仕方なかったけれど、社会人になり様々な経験をしたり、フランス留学したことで大きく考えが変わりました。私がフランスで暮らしていた町は出水にとても雰囲気が似ている田舎町。

「かごしま暮らし」二拠点生活で、心豊かな暮らしを/井町直紀さん・美穂さん

出水の街並み

そこで、自然がたくさんあって、周りを気にせず生活を楽しむことができるこんな環境の方が制作しやすいな…ということに気づかされたのです。出水に戻って来て、時間に追われることが無くなり、気持ちに余裕を感じています。最初は東京のアトリエを閉めて帰ってこようと思っていたけれど、東京の生徒さんたちに“ちょっと待って!”と言われて(笑)。今もアトリエは残して東京と出水を行き来しています。」と現在の生活(二拠点生活)を選択した経緯を話してくれた。

井町さんご夫婦が出水市に移り住んできたのは2018年。今、世界中を騒がす『コロナウイルス』とは無関係の時期だけれど、穏やかな表情で楽しそうに制作を続ける2人の様子を見ていると、改めて、“働く場所を選ばない”人たちへの“暮らしのお手本”となるのではないか?と強く感じさせられる出会いだった。

※後編では、井町さんご夫婦が感じる出水市の魅力とこれからの目標についてお話しを伺います。

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