プロローグ
“田舎暮らし”を始めたことで、たくましく育つ我が子の成長や地域・人の暖かさをしみじみと感じながら充実した毎日を過ごしているようだ。そんな川西さんご家族の今と、これからの未来ビジョンを聞いた。
インタビュー:満崎千鶴 撮影:高比良有城 取材日2019年9月
忙しくも充実〜もう少し先の理想へ〜
引っ越してきた当時1歳だった十太(じった)くんは3歳となり、毎日虫かごを持って元気に家を飛び出す。
昨年まで役場勤めだった大輔さんは、平成28年の3月に廃校になった白男川小学校を有効活用し、今年オープンした「きららの楽校」の施設管理やイベント企画・広報などを行う事務局として、奥様の麻弥さんは鶴田ダムの事務・コンシェルジュとして、忙しいながらも楽しく暮らしている。
川西さんご家族が思い描いた田舎暮らしは、理想通りに進んでいるのだろうか?
「地域おこし協力隊の仕事はとても忙しいけど充実しています。
映像作ったりポスターを作ったりするのが私の得意分野なので、自分の力を発揮し地域に貢献できる機会にも恵まれています。きららの楽校の業務はもちろんですが、その他にも町おこしや数々のイベント事務局に所属していてとにかく忙しい日々に“もう少しのんびり暮らせたらな〜”と思い描いていた田舎暮らしとのギャップを感じることもありますが、地域おこし協力隊の任期もあと1年。任期が満了したら気持ち的にゆっくり過ごせるかな?結局仕事が好きなのでどちらにしても忙しい日々を送るのだろうとは思いますが(笑)山菜採りにいったり釣りに行ったり、せっかくさつま町に暮らしているのだから、ここでしか出来ない楽しみ方をしたいな。」と話す大輔さん。
取材にお邪魔したこの日も、2019年9月14日にきららの楽校体育館で開催された音楽祭「サツメインサウンドフェスティバル」の運営メンバーが集まり打ち合わせを行なっていた。
「音楽で地域を興したい!」と切磋琢磨しながらイベント成功を目指す地元の仲間たちは大輔さんのことをこう話す。
「初対面の時に、“大ちゃんと呼んでください!”と自分から飛び込んできてくれたので、彼は地域に溶け込むのも早かったですね(笑)私たちにとって日常・当たり前の事も外から来た彼には新鮮だったり。視点が違う彼だからこそ見える“さつま町の魅力”に僕らの方が改めて気づかされることも多々あります。怒ったり笑ったりハッキリした性格だけど、彼みたいな人がもっとさつま町に来てくれたら嬉しいですね!こうしてさつま町の取材してもらえたし!ハハハ(笑)」
ハードスケジュールながらも地域の方たちとお酒を酌み交わし、仲間が奏でるギターに合わせて楽しそうに歌う大輔さんの姿はまるで、幼い頃からこの地で暮らす地元人のようだ。
さつま町のこれから、川西家の未来
職場であるきららの楽校の窓から見える田園と紫尾山の風景を見るのが好きだという大輔さん。
今後はこの場所を子供たちが集まって宿題をしたり、お母さんたちが安心して子供を預けられる地域のコミュニティー施設にしていきたいと話す。
「もともと田舎暮らしがしたくてこの場所を選んだけど、さつま町がもっともっと楽しく過ごせる町なればいいな。田舎だから音楽のライブイベントができないとか、田舎に生まれたから出来ない…ということが無い町にしたい。
きららの楽校はたくさんの可能性を持っています。手探りながらも自分たちが色々試してみることでその可能性を見出し、日本全国から人が訪れてくれたら嬉しい。コンビニも居酒屋もあるし、今はインターネットで何でも買える時代だから何も不便は感じません。たまにファーストフードのハンバーガーを食べたいとか大好きなプロ野球中継が少ないな〜と思うことはあるけど(笑)息子にも友達がたくさん出来て、毎日虫かごを持って遊びに出かけています。捕まえて来た虫を虫図鑑で調べて“コレ!”と教えてくれたり、トカゲやカエルを見つけては手掴みで捕まえたり…
自然いっぱいの恵まれた環境の中、たくましいく育つ我が子の姿を見てとても嬉しく思っています。鹿児島、さつま町に来てから家族みんなでキャッキャと仲良く、楽しく生活しているので、こんな生活がずっと続いていったらいいな〜と思っています。」
奥様の麻弥さんも「“夜ご飯食べに来ていいよ”とか、“子供を見ててあげるよ”とか、さつま町の人たちが真っ先に私たちのこをと受け入れてくれたので自然体のまま溶け込むことが出来ました。
地域の人たちが心を開いてくれていたのでそれをそのまま受け止めた…というのが正しいかな?楽しそうに仕事をしている主人を見て、本当に来て良かったと思っています。主人が地域おこし協力隊の仕事を通し、さつま町の魅力を発信することで、観光客が増えていけばいいな。川西家はこれからものんびりと、家族3人笑いながら健康に暮らしていけたら良いなと思っています。」と期待に満ちている。
『人生の折り返し』と言えば、 “後編”のように聞こえるかも知れないが川西さんご家族の人生はこれからが“前編”だ。