脱サラして手にいれた「生きる活力」

脱サラして手にいれた「生きる活力」(前編)

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プロローグ

宝島社が発行している田舎暮らしの月刊情報誌「田舎暮らしの本」をご存知だろうか。

田舎への移住を夢見る人たちが多く愛読しているというこの本(2019年2月号)で「住みたい田舎ランキング2019」が発表された。
これは移住支援策・医療・子育て・自然環境・就労支援・移住者数などを含む220項目のアンケートを実施し、663の市町村からの回答をもとにまとめられたもので、 “田舎移住”を具体的に考えている人には大変参考になるものだ。

調査を元に発表された人口10万人未満の“小さなまち”ランキング『シニア世代が住みたい部門』で全国9位、全国12エリア別ランキング『南九州エリア』では堂々の2位を獲得した鹿児島県日置市。今回は、そんな選ばれる町「日置市」に移住してきた仲村雅史さんご家族のお話を聞いた。

インタビュー:満崎千鶴 撮影:高比良有城 取材日2019年10月

脱サラ、そして農家へ

日置市伊集院町の土橋地区に暮らしている仲村雅史さん・真由美さんご夫妻。

仲村雅史さん・真由美さんご夫妻

桜島を望む丘の上にある“イチゴ畑”へ向かう仲村さんご夫妻

ご主人の雅史さんは石川県金沢市の出身で、日置市に移り住むまでは全国を転々とするサラリーマンだった。朝早くから夜遅くまで働き詰めで、家族と過ごす時間もろくに取れない毎日に、極度の疲れとストレスを感じていた雅史さんは、“もっと毎日を楽しめる仕事がしたい”と転職を考え始める。

転職には、地元(金沢)に帰る・最後の赴任先であった大阪で新たな仕事を探す…など様々な選択肢があったというが、お盆を利用し帰省した奥様の実家(鹿児島市)で、親戚から「農家もあるよ」と紹介されたのを機に、『農業』という職業に興味を持ちはじめたそうだ。

これまでの生活から離れ、新しい人生をスタートしたかった雅史さんは早速、転職フェアで鹿児島の転職相談窓口に足を運び、話を聞いた。

奥様の地元であり、雅史さんが当時働いていた会社の初任地でもあった鹿児島には、土地感もあり親しみやすさを感じていたことから、必然的に移住候補地となったのだ。
雅史さんは親戚から紹介されたイチゴ農家さんのビニールハウスを初めて見学した時のことを振り返る。

「それは暑い夏の日で、イチゴの苗に水を撒いていたんです。その水しぶきがとても綺麗で、“あ〜、なんかこういうの良いな〜”と思ったんです。もうサラリーマンには戻りたくない!農家になろう!とこの時決意しました」

「最初、主人が農家になると言い出した時は冗談だろうと思いました。仕事に疲れて病んでいるんだな〜、可哀想に…くらいで(笑)本気にはしていませんでした。でも、どうせ転職するんだったらやりたいことをやってくれたらいいなと。きっとこれが人生のラストチャンスだから…と応援することにしました」と笑う奥様の後押しもあり、雅史さんは脱サラ、農家になる道を選択した。

イチゴ農家1年生!先輩たちの手厚いフォロー

こうして2016年、日置市に移住しイチゴ農家への道を歩み始めた仲村さんご夫妻だが、何から始めていいのかさえ分からない新米ぶり。イチゴ農家の師匠から“お前はここを使え!”と紹介された農地(畑)を見に行くと、長年使っていなかったこともあり竹や雑草が生え荒れ果てた状態…正直とても戸惑いました…と雅史さんは当時を振り返る。
農家の基盤となる畑つくり(土地の整備)から手取り足取り教えてくれたのはやはり、師匠や先輩農家さんたちだった。

大切なハウスのメンテナンスも大切な仕事

「“まずはみんなに手伝ってもらいながら草払いを行いました。”次は水を通すから”と師匠が言うので、これから業者さんが来るのかな〜?と思っていたら、次々と近所で農家を営む先輩方が集まってきて。みんなでトンチンカンチン作業を始めるんです(笑)あっという間に私たちの畑に水が通りました(笑) “お金はいらないから”と大切に育ててきた苗も分けてくれて…本当に感謝しています。その後も、農家どころか家庭菜園さえ怪しい私たちが先輩たちの作業を見よう見まねで真似していると、そうじゃない!虫が付いている!なんて叱られながらも 0から10までサポートしてくれました。

ひとつひとつ丁寧に苗の成長を確認する仲村さんご夫妻


厳しくも温かい先輩たちのおかげで、最初の1年目に収穫したイチゴは賞を頂いたんですよ(笑)まぁ…先輩たちが毎日のように様子を見に来てくれて、目を離さず見守ってくれたからなんですけどね(笑)それ以来一度も賞なんて取れてませんから(笑)そんなに甘くない!とまた先輩に叱られました」と笑う雅史さん。
こうして、先輩たちの手厚いフォローを貰いながら仲村さんご夫婦のイチゴ農家1年生生活は始まった。

3種のイチゴ

仲村さんご夫妻は現在、日置市伊集院町の中川地区に3つのイチゴ畑を所有している。この周辺には20軒ほどのイチゴ農家さんがいるというが、周囲を見渡すと自然に囲まれた山間にたくさんのビニールハウスが並ぶ。

奥にみえるのも全てイチゴ農家のビニールハウス

奥にみえるのも全てイチゴ農家のビニールハウス

日置町で収穫されるイチゴは主に3種類。酸味が少なく甘みが強い、そしてジューシーさが特徴の『さがほのか』、今年、鹿児島県知事が名前を公募し発売を開始した『ぴかいちご』は果肉が柔らかく甘みが強いのが特徴だ。そしてやや硬めであるが果肉が大きく強い甘みが特徴の『さつまおとめ』。
どれも7月〜10月ごろまでは苗や畑を育てる準備期間となっており、この時期の苗は病気を防ぐため決して雨に濡らしてはならない。ハウスの中で大切に育てるのだ。10月ごろからは苗を畑へ移す “植え付け”が始まる。

畑に移したばかりの苗を見守るご夫妻

たくさんの日光と風通しに注意しながら

たくさんの日光と風通しに注意しながら我が子のように成長を見守る。取材に訪れたこの時期はこの植え付けの時期だったため、残念ながら実るイチゴを目にすることは出来なかったがチラホラと真っ白な可愛い花を咲かせていた。

花を咲かせるイチゴの苗

花を咲かせるイチゴの苗

時期によってはせっかく咲かせたこの花も摘み取らなければならないそうだが、その判断がまた難しい。
「以前、師匠に“早い時期の花は摘み採れ!”と教えられたので、妻と一生懸命摘み取っていたら、“お前!何やってんだ!!これが実になるんだぞ!!いくら捨てたと思ってるんだ!”と激怒されました(笑)摘み取った花の数を数えては悔しがる師匠…激しく叱られはしましたが、自分ごとのように悔しがる師匠からは愛情を感じました(笑)」と振り返り笑顔で話す仲村さんご夫妻。

話を聞けば聞くほど、イチゴ栽培の奥深さを思い知らされた。

※後編では実際に鹿児島への移住を経験した仲村さんご夫妻がみる鹿児島の印象や、イチゴ農家として今後目指すことについて伺います。

仲村雅史さんの鹿児島暮らしメモ

かごしま暮らし歴は?

3年半

Iターンした年齢は?

42歳

Iターンの決め手は?

サラリーマンを辞めて転職を考えていた時“農業”という職業に出会い、そこに親戚がいたから。

暮らしている地域の好きなところ

街に近くて温泉もあるし、人が暖かいところ

かごしま暮らしを考える同世代へひとこと

鹿児島の人は前向きな人が多いから一緒に汗をかきながら応援してくれます。ぜひ鹿児島へ!

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