奄美群島の生物や文化の多様性保全と地方創生をテーマにしたシンポジウムが2月19日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。オンライン視聴を含め約110人が参加。鹿児島大学の研究者らが自然環境やビッグデータ、AI(人工知能)を活用した産業や再生可能エネルギーの可能性など幅広い分野で発表し、地域課題の解決策を探った。
シンポジウムは、鹿児島大学の国際島嶼(とうしょ)教育研究センターと同大大学院理工学研究科が2022年度に着手した合同プロジェクトのキックオフイベントとして開催。「生物文化多様性」と「地方創生」をテーマに研究を進め、環境保全と経済発展が融合する「革新的モデル」の構築を目指す。
プログラムは2部構成。前半は生物文化多様性部門の植物、水圏、陸上動物、地域研究の4班の発表があった。同大教育学部の川西基博准教授は、奄美大島の世界自然遺産地域の森林と希少な植物のモニタリング調査について発表。「森林と生物群集の変化を明らかにすることで、保全のための情報を提供していきたい」と述べた。
水産学部の久米元准教授は、リュウキュウアユの生息状況を報告し、温暖化や渡り鳥のカワウによる食害の影響に懸念を示した。同学部の鳥居亨司准教授は、与論島で進める漁協と鮮魚店、リゾートホテルをつないで、観光客に地魚を提供するビジネスモデルを紹介した。
後半は地方創生部門の研究について、同大理工学研究科の山城徹教授が水産、海洋産業の作業のスマート化や、再生可能エネルギーの利活用などに取り組むと説明。AIを活用した海洋プラスチックゴミ量の予測や、与論島などで進める漁業者と連携したスマート水産業に関する発表もあった。
同大の高宮広土国際島嶼教育研究センター長は「島の自然を守り、少ない資源をカバーしながら、環境保全と利用を融合して、島の人たちが暮らしやすいモデルを構築して提供したい」と話した。