夕陽のあと

長島町で映画作りが始まったワケ ー 長島町映画「夕陽のあと」

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長島町では、養殖に適した海流の中で育てられたブリ、鯛、シマアジ、サバ、ワカメ、あわび、緋扇貝など海産物はバラエティに富んでおり、冬から春にかけてはミネラル、鉄分が含まれた赤土で育ったじゃがいもが収穫期を迎えます。また、温州みかん発祥の地である長島では、不知火(デコポン)といった果実の栽培であったり、牛、鶏、豚の畜産業を営まれている方もいらっしゃる、一次生産の盛んな島です。

いざ、東京を離れて長島町に暮らしてみると、これだけ恵まれた環境も他に無いと思えるほどなのですが、長島にはもうひとつ自慢があります。

それは2.06人(2016年調べ)と全国クラスの出生率の高さです。
長島町は子を産み、育てていく場所として理解ある地域であることが数字として実績が出ています。高校生まで医療費免除や、進学後に長島町にUターンし勤める場合に奨学金全額免除となる「ぶり奨学金」といった自治体のサポートが充実していることも出生率に起因していると思いますが、個人的には、地域の繋がりがやはり代えがたい資産であり、出生率の高さたる所以ではないかと感じます。

長島町では50以上の集落が存在します。そして集落の集まりは多岐にわたります。
集落対抗のバレーボール大会、ソフトボール大会、運動会といった近所の老若男女とスポーツを通じて交流を深める機会があります。また、毎年8月8日におこなわれる伝統的な祭り”御八日踊り”では地区ごとに町内の様々な場所で踊りを披露していくわけですが、伝統の催しを集落の方達で継承していきます。つまり、隣近所の兄ちゃんが先輩や師匠となり、集落の子どもたちに踊りを指導していくわけです。

長島町で2年に1度おこなわれる”ながしま造形美術展”では集落、小学校PTAの保護者たち、町役場など各コミュニティが、身近にある自然素材や廃材を活用して毎晩集い造形物を制作しています。ベテランの方達は溶接などの専門的技術で骨組みをつくり、若手は体を動かしてせっせと装飾をしていく様子が見られます。

とどのつまり、親子の絆を飛び越えて、長島が人間を育んでいく場所となっています。
それが出生率の高さにきっと繋がっているんだと感じてなりません。

そんな折、2017年、長島町役場の中でこんな話しがあがったそうです。
「長島町を舞台にした映画をつくって長島町をPRしよう」
この瞬間「夕陽のあと」は産声をあげました。

そして「夕陽のあと」は”子育て”を軸に据えた物語になることが決まりました。

とは言え、長島町に映画制作経験者などひとりもいません。

分からないなりに進めていくと、当時の副町長、地域おこし協力隊が人づてに映像制作プロダクションのドキュメンタリージャパンに出会い、映画制作への思いを伝え、一緒に映画制作を進めてもらえることになりました。

ドキュメンタリージャパンはその名のとおり、ドキュメンタリーの実績豊富なプロフェッショナル。
長島町はあえて島を過剰に良く見せてよそ行きの姿を伝えることがない豊かな島です。
なので、長島町の実状を切り取っていただき、リアルな姿を映像におさめていただくドキュメンタリージャパンが制作に加わってくれたことはとても心強いものでした。

映画づくりは分からなくても、映画の企画の骨子が決まって撮影の時期が決まってきたり、脚本のたたき台が出来上がってくると、実感が湧いてきます。じわじわとその熱は町の中で伝わり始めてきました。

長島町の特産品・養殖ぶりの「鰤王」を世界各地へ届けている東町漁協の組合長や、農業、建設業、商工会などなど町内の事業者の有志の皆さんとともに長島大陸映画実行委員会が発足されると、町内での広報活動や、協賛金のお願い、町内オーディションなど、映画と町の皆さんとの接点が少しずつ広まっていきました。

そして忘れもしない2018年11月26日。いよいよクランクインを迎えることになりました。

映画『夕陽のあと』

監督:越川道夫(『海辺の生と死』)
出演:貫地谷しほり/山田真歩/永井大/川口覚/松原豊和/木内みどり
脚本:嶋田うれ葉/音楽:宇波拓企画・原案:舩橋淳プロデューサー:橋本佳子/長島町プロデュース:小楠雄士/撮影監督:戸田義久/同時録音:森英司/音響:菊池信之/編集:菊井貴繁/助監督:近藤有希
製作:長島大陸映画実行委員会/制作:ドキュメンタリージャパン/配給:コピアポア・フィルム
2019年|日本|133分|カラー|ビスタサイズ|5.1ch
公式URL:yuhinoato.com

-鹿児島の地域おこし協力隊
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