奄美大島いきものがたり

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●奄美大島のフクロウたち

トラフズク

 年間を通して奄美大島に生息する留鳥のフクロウは2種。リュウキュウコノハズクとリュウキュウアオバズクである。リュウキュウコノハズクは日本最小級のフクロウの仲間で、全長は21センチほど。島では最も身近なフクロウで、江戸時代末期に描かれた「南島雑話」にも掲載されている。夜になると「コホッコホッ」と鳴き声を発するので、なじみのある方が多いだろう。これはオスの鳴き声であり、メスはネコに似た鳴き声を発する。7月頃には巣立ち直後の幼鳥が見られるようになり、夜の林道を走行していると、あちこちから親鳥にエサをねだる幼鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 リュウキュウアオバズクはあまり知られていない存在かもしれない。全長は30㌢ほどで、腹面に太い縦模様が入るのが特徴である。平地から山地に生息し、夜間に街灯の近くの電線などに止まっていることが多い。警戒心が強く、リュウキュウコノハズクのようにじっくり観察できる機会は少ない。

 ここからはあまり触れられることのない渡りをするフクロウの仲間について紹介する。近年、トラフズクという大型のフクロウが奄美大島で越冬する事例が増えている。年によって越冬数の変動はあるように感じるが、1本の林道で3~4羽が越冬したこともあった。集落内の電線に止まっているのを見たこともある。

 彼らはネズミなどの小型哺乳類や鳥類を捕食する。今まで奄美大島固有のアマミトゲネズミを捕食するシーンを2回目撃した。トラフズクは決まって小型のネズミ類が高密度に生息する林道で越冬することから、ネズミとの関係が強そうだ。

 沖縄諸島には留鳥として亜種リュウキュウオオコノハズクが分布する島もある。しかし、奄美群島で見られるオオコノハズクは、渡りのシーズンに稀に通過していくだけである。虹彩が赤色なので、識別は容易であるが、見かける機会はめったにない。

 山地ではなく農耕地を好むのはコミミズク。夜間にも活動するが、夕暮れが近づいてきたタイミングで、ネズミなどを狙って農耕地を低空飛行する。一度だけ奄美大島の集落横の農耕地で観察したことがある。また、日本国内の記録例が少ないワシミミズクという大型のフクロウは、奄美大島で記録されたこともあるそうだ。

 普段あまり生き物を観察されない人が珍しい渡り鳥を発見するケースはある。皆さまも見たことのない生き物を観察したときはぜひ撮影をして、奄美博物館にも情報提供をしていただきたい。                                     (平城達哉・奄美博物館)

コミミズク

 

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