進行する春

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こんにちは。YakushimaFilmのしゅんぞうです。

ゴールデンウィークも終わり、ほっと一息ついて投稿しています。今年は月に一度、屋久島の山の季節の移ろいをお伝えしたいと思っています。前回、冬から春に変わっていく3月の様子をお伝えしたので、今回は4月のゴールデンウィーク前までの進行していく春の山をお届けします。

上の写真、海まで新緑の照葉樹林が迫っている風景を見ると、改めてこの島は森の島だと気づかされます。

今年の白谷雲水峡にある太鼓岩からの山桜は花芽が少なかったのか、例年に比べてあまり派手にはなりませんでしたが、控えめな山桜のピンクと常緑の木々の色合いがちょうどいい塩梅で、乙で素敵でした。この林内には縄文杉に向かうトロッコ道がひかれているのですが、その軌道からこの森を見上げてみると...

こんな感じです。山桜の花のピンク、山桜の葉のしゅう色、ヤクシマオナガカエデの黄緑色、杉の深緑など、一体何種類の色が散りばめられているのだろうと感嘆してしまいます。さらにグッと寄って森の植物を間近で紹介していきたいと思います。

前回紹介した山の春を告げるオオゴカヨウオウレンの花はほぼ終わり、果実が実り始めていました。

そのオオゴカヨウオウレンのそばで今年初見のツクシショウジョウバカマが花を咲かせ、ぐんぐん春が進行していることに気づかされます。毎年、花の移ろい方はいっしょなのですが、飽きることはなく、むしろ歳を重ねるごとに喜びと安心感が増して、山にいる幸福感がジワジワと上昇しています。

これはユズリハの新芽です。濃いピンク色の芽鱗(冬の寒さから新芽を守っている小片)を今まさに突き破ったばかりの姿に、ユズリハの生命感と春への喜びを感じました。

ヒサカキの花が鈴なりに咲き、特有の香りを森に充満させていました。この香りはいい匂いでは決してないのですが嗅ぐと春を感じてしまいます。プロパンガスのような匂いと表現する人もいますが、僕は全くそうは思わないです…笑

ミヤマシキミ。果実と葉に多くの有害成分が含まれますが、とても可憐な花を咲かせます。

さらに毒性の強い、植物では唯一劇物取締法で劇物に指定されているシキミも花を咲かせていました。シキミは葉、茎、根、果実、種子全てが有毒で、特に果実を食すると死亡する可能性があるとも言われています。怖い植物ですが、何とも魅力的な花を咲かせます。

オオミズゴケ。苔たちも新たな葉を伸ばしはじめています。

そして、4月にもっとも嬉しい出会いだったのが、照葉樹林の林床に花を咲かせていたフユザキヤツシロランです。この植物は菌従属栄養植物とよばれ、光合成することなく、生きるために必要な栄養を菌類から得て暮らしています。森の土壌に豊富な有機物が蓄積されていないと出現してこない植物で、この菌従属栄養植物が開花したということは、その森が成熟した豊かな森である証拠なのです。伐採が入ってしまった森では、この植物たちが出現するまでに150〜200年という歳月がかかるともいわれています。

この1cmほどの小さな花にこの島の壮大な豊かさが内包されているのです。

夢中で撮影していると、伐採を免れているこの森でこのフユザキヤツシロランが花咲かせられたことに喜びを感じているように思えてきました。

なんか笑っているように見えません?笑

ではでは、今回は島の中腹の春をお伝えしました。屋久島の奥岳、最も高い山岳の春もぼちぼち始まりだしたので、次回は島の天上界の春をお届けしたいと思います。

ではまたっ!

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