奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は3日までに、冬から春にかけて鹿児島県奄美大島近海に来遊するザトウクジラの2024年シーズンの調査結果(25年3月末現在)をまとめた。出現確認数は1093群1799頭で過去最多。うち15%ほどが母子の群れで、同協会はクジラの子育て環境を守るために、今後の観察ルール厳罰化を決めた。
調査は同協会に加盟するダイビング業者ら15事業者が、海上からの観察を中心に出現情報を計上した。今期は24年12月11日に瀬戸内町加計呂麻島の徳浜沖で初確認。ホエールウオッチング参加者も25年1~3月の延べ人数が7789人と過去最多で、参加者のうち55・3%は海中からクジラを観察するホエールスイムに参加した。
2日にあった総会では、一般財団法人沖縄美ら島財団総合研究センターの小林希実主任研究員が観察ツアーがクジラに与える影響について最新の知見を共有。人が海中でクジラに接近するホエールスイムはクジラの親子に大きなストレスを与える可能性が指摘された。

奄美大島近海で生まれた子クジラ=2月17日、奄美市名瀬の小湊沖(興克樹さん撮影)
同協会はこれまでも、スイムの同時入水人数や同一個体への観察回数などを制限して対象への影響低減を図ってきた。来期からはさらに、スイムでの観察を母子群は2回まで、その他は4回までとルールを厳しくする。また、生後間もない子クジラについては海中での接近を原則禁止とした。
興会長は「クジラが安心して子育てできる環境を保つためにルールを追加した。負担をなくすことでより自然な姿を観察できるようになり、観光の質の向上にもつながる」と語った。
ザトウクジラは成体の体長約12~14メートル、体重約30トン超にもなる大型のクジラ。夏場はロシアやアラスカなどの冷たい海で餌を食べ、冬季に繁殖や子育てのため、国内では沖縄や小笠原などの暖かい海域へ移る。奄美近海でも子クジラが誕生しており、毎年里帰りする個体も確認されている。

奄美大島周辺でのザトウクジラの発見頭数(奄美クジラ・イルカ協会提供)