〇冬到来、カワウがやってくる
夏のような暑い日々から秋らしさを感じることなく、一気に冬入りした2024年の奄美大島。12月からは冬鳥のシロハラやカワウを見かける機会が多くなってきて、いよいよ本格的な冬到来といったところ。
奄美大島に渡ってくるウの仲間はカワウとウミウの存在が知られているが、そのほとんどはカワウである。海にいるのがウミウ、川にいるのがカワウというわけではない。両種の識別方法については、図鑑を参照いただきたい。
島内では、海岸や河川沿いなどで見られる。川岸や岩礁で羽を休ませていることがあれば、水面を泳ぎ回り潜水する姿を見られることもある。近年、日本各地で渡来数の増加が報告されていて、奄美大島でも同様の傾向がみられる。
カワウは夜間に集団でねぐらを形成することが知られている。地域によってはねぐらの規模が巨大化し、糞害も報告されている。奄美大島でも集団ねぐらの存在が確認されているため、今後も注視しておく必要がありそうだ。
〇風が種を運ぶ、サキシマフヨウ
夏から秋への移り変わりを教えてくれるサキシマフヨウの花。ハイビスカスやオオハマボウなどと同じ仲間で、花の形状も似ている。花は白色やピンク色などとさまざま。花の季節は長く、真冬の寒さに負けずに今でも開花しているものもある。
冬になると、花を終えたサキシマフヨウの種子が見られる。植物の種子の散布方法にはいくつかのパターンがある。動物に食べてもらったり毛や皮膚などにくっついたりして運んでもらう動物散布、風に運んでもらう風散布のほか、水流散布、雨滴散布、自動散布などの方法が知られている。サキシマフヨウは風散布で、長い毛をまとった種子が風に揺られ、たどり着いた場所で定着することができれば、生育地を拡大させることに成功する。タンポポをイメージするとわかりやすいのではないだろうか。植物といえば花に注目してしまいがちだが、それぞれの段階で興味深い生態を持っているのである。(奄美博物館)