大型の海鳥、オオグンカンドリが9月下旬に鹿児島県宇検村で弱った状態で見つかり、龍郷町の動物病院で手当てを受けていたが、今月9日、奄美市崎原の展望台から無事放鳥された。奄美群島での目撃例は少なく、台風や天候の影響で飛来したとみられる。NPO法人奄美野鳥の会(永井弓子代表)は「奄美近海での目撃例はいくつかあるが、保護された事例は恐らくないのでは」と話している。
オオグンカンドリは全長約80~100センチで、翼を広げた全幅は2メートルを超える大型の黒い海鳥。成体のオスは喉が赤く、メスは胸が白い。若鳥は頭と胸が白い。飛ぶことに特化した鳥で、他の海鳥がとった魚を奪って食べる。羽毛に防水性がないため、着水したら溺れてしまうという。熱帯や亜熱帯に広く分布し、国内各地で観察例があるが、日本では迷鳥とされる。
今回の個体は9月26日、宇検村で動けなくなっているところを環境省の職員に保護され、龍郷町の「奄美いんまや動物病院」に運ばれた。同院の伊藤圭子獣医師(47)によると、保護された個体は若鳥で外傷はないもののかなり痩せており、台風や悪天候で飛ばされたと見られる。
保護時は700グラムほどだった体重も1キロを超え、動きが活発になったことから9日に放鳥。1時間ほど羽ばたきや日光浴をしたのち飛翔し、上昇気流に乗りながら遠く離れて行った。
伊藤獣医師は「あまり保護の事例がなく、大きな鳥なので餌の量や体重、羽がすれたり足が悪くならないような管理に苦労した」と振り返り「無事に飛んで行きホッとした。私自身、貴重な経験となった。台風の時期は迷鳥が飛来することがあり、弱った個体や死骸を見かけたら、記録のためにも関係機関へ連絡してほしい」と話した。