鹿児島大学総合研究博物館と、鹿大、佐賀大学、琉球大学の連合農学研究科でつくる研究チームはこのほど、日本国内では標本に基づく記録がなかったニザダイ科クロハギ属の魚類「アカンスルス アウランチカブス」が鹿児島県奄美大島で初めて採集されたと発表した。体の柄が魔除けの文様を連想させることから、「マジナイクロハギ」と和名を付けた。
鹿児島大学によると、マジナイクロハギはこれまでインド・太平洋に広く分布することが知られていたが、日本国内では沖縄県八重山諸島で水揚げされた個体の写真のみで、標本に基づく記録はなかった。鹿大が主導する長年の調査でも、奄美大島産の1個体しか採集されていない。
研究成果から、同種は国内では繁殖しておらず、本来の分布域から黒潮に乗って偶然流れ着く「無効分散」と考えられるという。同研究は日本魚類学会が発行する魚類学雑誌で6月25日に公開された。
マジナイクロハギは尾の付け根に白い線があり、眼前や胸部、尾柄(びへい)のとげ周辺に橙色の模様が入るのが特徴。奄美大島で採集されたのは体長約22センチの成魚で、昨年6月に地元の男性が大和村の今里漁港の水深4~7メートル付近から釣り上げた。標本として鹿児島大学総合研究博物館に保管されている。
鹿大総合研究博物館長の本村浩之教授は「奄美では好奇心ある地元住民の協力もあってまだまだ新発見が続いている。今後も見慣れない魚を見付けたらぜひ連絡してほしい」と話した。