鹿児島県奄美大島・龍郷町で24日、伝統行事の「種下ろし」が始まった。浦集落では同日、浦生活館で開催。あいにくの雨の中、80人以上が参加して踊りの輪を広げ、飲んで歌って、夜遅くまで一体となって楽しんだ。
翌年の豊作を祈り、1年を締めくくる稲作行事。例年、10月下旬~11月上旬に各集落で行われる。かつては集落内のすべての家を回って夜通し踊り明かしたというが、現在は公民館や新築の家などを中心に数件で踊るのが一般的。集落にある施設の維持、管理のため寄付を募る場ともなっている。
浦生活館では午後7時にスタート。男女が輪になり、チヂン(太鼓)のリズムに合わせ、歌い踊った。寄付(ハナ)の披露にハト(指笛)や拍手、三線をかき鳴らし、歓声を上げて熱気を高め、踊り続けた。
同集落の前田博仁区長(72)は「集落の保存会が中心となり月一回、踊りの練習をしている。浦集落は若い人も多く活気がある。種下ろしではみんな浮き浮きしている」と話した。
集落住民のほか島外からも多数の参加者を迎えた。友人に誘われて初めて参加したという東京都の平田未緒さん(57)は「大人も子どもも一緒に楽しみ、命としてみんなが一つという感じに感動している。地元の方が踊りを教えてくれたり『上手だ』と声を掛けてくれ、よそ者の私を含んでくれる感じがうれしい」と笑顔。
インドネシアから訪れたという熊野正浩さん(44)は「裏も表もなく気持ちを共有できる楽しい場。地元の方に『来てもらえてうれしい』と快く受け入れてもらった。種下ろしは心が満たされる感じ」と楽しんだ様子だった。

浦集落の種下ろし。輪になり踊る参加者=24日、龍郷町の浦生活館

