真辺侑也さん/waccasea

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「みんなで幸せに暮らすために」
内側から地域を変えていく屋久島の若者グループ立ち上げ

8月24日、一湊漁港前の「漁村センター」(屋久島町一湊)で「みなとの市場」が開催され、一湊の若者グループ「waccasea(わっかしー)」の活動が、ひとつ実を結んだ。

「みなとの市場」を企画運営するのは、同集落ゆかりの20〜30代の若者を中心としたグループ・waccasea。グループ名には、集落の方言で「若い衆」を意味する言葉に、漁業で栄えた町を記念して「海」を意味する「sea」を入れた。 

一湊集落は屋久島の中でも、人口の減少率が高く、1995(平成7)年に1,000人ほどだった人口は、2025(令和7)年6月末で517人と、ほぼ半減している。

会場となった「漁村センター」は、1981年建築の鉄筋コンクリート造。ここ10年ほどほとんど活用されず、物置状態となっていたこの建物を、waccaseaのメンバーを中心とした集落の有志で掃除し、網戸を張り替え、横幅3メートルの巨大水槽を運び入れ、キッズスペースにカーペットを敷き、少しずつ手入れしてきた。

関係各所に使用の交渉をし、地域の祭りでタオルやTシャツといったオリジナルグッズを販売して資金を稼ぎ、クラウドファウンディングで支援を募り、出店する事業者を集め、この日のために地域のみんなで準備してきた。

イベント開催のきっかけは、waccaseaが2024年に一湊公民館に集落の人を集めて開催した、大意見交換会「一湊未来予想図I」。小学1年生から81歳まで、約60人が参加したこの会で、「一湊に残したいもの」「あったらいいもの、こと」「やってみたいこと」を話し合い、記録した。

この内容をもとに、「人が繋がり活気溢れる集落」「子どもから高齢者まで豊かに暮らせる集落」「港町としての伝統が誇りの集落」という3つのテーマを設け、形にしたのがこのイベントだ。

waccaseaを率いる代表の真辺侑也さんは、「話し合って満足、という風にはしたくなかった。アイデアを形にすることで、その過程も楽しんでいきたい」と、漁村センターを掃除する様子や、水槽に泳がせる魚を釣りに行く様子までも動画に収め、YouTubeにアップしている。

真辺さんは、屋久島高校卒業後に屋久島町役場に就職した生粋の屋久島っ子。

就職したものの「このまま島の外の暮らしを知らなくていいのか」「今からでも大学受験してみようか」と悶々としていた時に、声をかけられて参加した一湊校区の地域ミュージカルをきっかけに、地域振興への関心が高まっていった。

「学生時代は自分自身だったり、家族や友だちだったり、関心の対象は限られていたけれど、顔見知り程度だった地域の上の世代の人たちと、ミュージカルの練習や準備を通じて深く知り合って、世界が広がるにつれ、『みんなで幸せに暮らしたい』と思う、幸せの輪が少しずつ大きくなっていった」と当時を振り返る。

2013年には、母校である一湊中学校の閉校式にも立ち会い、地域への愛着とともに「このままでよいのか」という危機感が育っていった。

「一湊はめつけ隊」という、40〜50代が中心となった先輩団体のイベント運営にも刺激を受け、waccaseaを2021年に結成。

コロナ禍、さまざまなイベントが中止になり、家族で過ごす時間が増える中、真辺さんは「家族も地域も大切にするにはどうしたらいいのか」自分の心にじっくりと向き合い、時間の使い方を工夫することができたという。

waccaseaには子育て中のメンバーも多いことから、クリスマスやハロウィンなどの子ども向けイベントから活動をスタート。地域の祭りを手伝ったり、ブースを出したり、自分たちにできることを「楽しんで」行ってきた。

 「みなとの市場」は月に数回の単発イベントだが、せっかくきれいに整えた漁村センターをもっと活用できるよう、waccasea以外の事業者にも広く利用を呼びかけていきたいという。

 空き家の再生や、一湊名物を詰め合わせた宅配便など、メンバーからの「やってみたい」アイデアは尽きないが、「みんなで幸せに暮らしたい」という軸がブレなければ、思いは「楽しく」形になっていく。



waccasea
https://www.instagram.com/waccasea/
https://www.youtube.com/@waccasea0505

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