
郷土楽器ゴッタンで屋久島民謡を奏でるお祭りユニット
屋久島の民謡ユニット「あべとも座」のメンバーは、イベント音響や作編曲などを行う「408スタジオ屋久島」を主催するあべ心也(しんや)さんと、理容室「ニューツカモト」を営む塚本智典さんの2人。
あべさんが、南九州に伝わる郷土楽器・箱型の三弦三味線ゴッタンの演奏と唄、塚本さんが太鼓と鉦(かね)と唄を担当する。
2人が出会ったきっかけは、鹿児島のゴッタン奏者、寺原仁太さんの屋久島ライブだった。
寺原さんの招へいを計画していた塚本さんが、島で音響の仕事をしていたあべさんに声をかけたのが最初の出会い。
ライブでは、みんなで知恵を出し合って、小道具を作ったり、出展者を選んだり、演出を一緒に考える中で、前座として自分たちも舞台に立つことになった。
演奏するのは、あべさんが島民から教わったり、古いカセットテープなどで覚えたりした屋久島の民謡。ピアノやギター、サックスなどさまざまな楽器を操るあべさんと、ジャンベをやっていた塚本さんで練習を重ね、今の形に落ち着いてきた。
「演奏だけでなく、祭りを作りたいんです」というあべとも座は、ライブの都度、衣装に着替え、のぼりを立て、提灯を下げ、めくり台を置き、世界観を演出する。良い音響と丁寧に作り込まれた世界観で、観客は自然と民謡の世界にいざなわれる。
北から南から、多くの人が出入りしていたこの島には、芝居小屋にやってくる旅芸人や出稼ぎの人々がもたらしたと思われる民謡がいくつも伝わっており、替え歌も盛ん。あべさんは、「民謡には昔の人々の暮らしぶりが表れている。屋久島に農作業の歌が少ないのは、狩猟採取の多かった時代の名残なのでは」と考察する。
集落ごとに川で隔てられ、かつては方言も顔立ちも違っていたというこの島では、民謡も集落ごとに異なるといったケースも珍しくなく、高齢者でも初めて聴くという唄や歌詞に出会うことも多い。島内の祭りや敬老会、棟上げ、開店祝いに出向くこともある。

「あべとも座」では、2024年にCDアルバム「屋久島民謡集 壱の巻」をリリース。
今年3月からは、Spotify、Apple Musicなどで、アルバムに収録された「父親(てっちゃ)の子守唄」の音楽配信も始まった。CDは、5曲入りで1,500円。