
こんにちは。YakushimaFilmのしゅんぞうです。
4月には島の中腹まで上がってきた春をお伝えしましたが、5月に入って奥岳にも春がやってきました。今年の冬は豪雪だったので、雪がなくなり、赤茶けた杉の葉が緑を取り戻すと、奥岳は別世界のよう。

奥岳の春一番に咲くアセビがあちこちで咲き乱れていました。アセビの和名は「馬酔木」と書かれますが、これはアセビに毒性があり、摂取した馬が、中毒症状により酔っ払ったように足元がおぼつかなくなることに由来しています。
アセビには、グラヤノトキシンやクエルセチンといった有害成分が多く含まれています。人にも有害で、摂取すると下痢や嘔吐、腹痛、痙攣、麻痺などさまざまな症状を引き起こす可能性があります。

鹿は決して口にしないので、奥岳には沢山のアセビが自生しています。

私が山を覚えた東北の栗駒山で知ったオオカメノキも咲き始めていました。屋久島の山岳にも、個体数は少ないですが自生しています。屋久島が世界自然遺産に登録された理由の一つは、豊かな垂直分布。亜熱帯から亜寒帯の気候がこの小さな島には存在しているので、東北や北海道で見かける樹木が、屋久島の山岳のみで見られることがあります。

標高1000mぐらいから奥岳まで広く分布しているハイノキも咲いていました。霧雨で雫を蓄えた花がなんとも美しかったです。

去年が当たり年だったミツバツツジは、今年は控えめに咲いていました。奥岳の緑と花崗岩の白に、ミツバツツジの赤紫が混じる風景が5月の奥岳の風物詩だなと思います。

こんな感じで、まばらにミツバツツジが点在しています。

ツゲの花も咲いていました。

去年大満開だったシャクナゲは今年はあまり期待されていませんが、株によってはけっこう蕾がついていました。大満開の翌年は裏年と言ってあまり咲かないと言われています。

5月15日には、開花しているシャクナゲを確認できました。これから徐々に6月の雨の奥岳を美しくしてくれることでしょう。
これまでは木の花をお伝えしましたが足元の小さな草も花をつけていました。


今年は5月16日に九州南部が梅雨入りしました。この早い梅雨入りがどのように島の山岳に影響するのか、注意深く観察していきたいです。
そして、今日は最後に、先ほど紹介したハイノキの花が縄文杉付近で大満開だったので、奥岳ではない中腹のエリアですが紹介して終わりたいと思います。

今年はハイノキの花が当たり年。
雪のように咲く様がとても美しい花です。
かつては縄文杉を見やすくするために
周りの木々はすべて斬られてしまいました。
無数の根が絡み合って
保持されていた土壌は
天然のネットを失い土は流れはじめました。
そして縄文杉の根がむき出しになって
弱ってしまいました。

そのとき人間は気づきました
一本の木が生きていくためには
周りの木々の支えが必要だということを。
一人勝ちの競争ではなく
みんなで支え合う共創の関係で
森は成り立っていると。
それがわかると今度は
無数に苗木を植えだした人間
そして数年経ってその木々が
縄文杉を隠すまでに。
また斬ってしまうのかなと
悲観的な思いがよぎったりもしましたが
程よく剪定するという手段が採用され
今は風情ある下草が繁茂しながら
縄文杉の存在をより引き立てているように感じます。

生かされたハイノキがこれほど花をつけるのは初めてのこと。
自然と人が共生していくという環境文化を垣間見れた瞬間でした。