「野球審判の魅力知って」 徳之島=高齢化、人材不足が課題、若手の育成へ

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 アマチュア野球審判員の高齢化が進み、人材不足が全国的に課題となっている。野球が盛んな鹿児島県徳之島でも若手の審判員を増やそうと、野球連盟が育成活動に本腰を入れ始めた。県硬式野球連盟徳之島支部の徳範文支部長(70)は2月、本土から若手審判員を招いた講話会を開催。「島の球児を支えるためにも、若い人たちに審判員の魅力を知ってほしい」と話している。

■徳之島の現状

 野球やソフトボールの試合には球審1人、塁審3人の計4人の審判員が必要。公式の試合でなければ球審を除く塁審は生徒や教諭が務めるケースも少なくない。

 一方、高校野球の地区予選大会など公式戦は、鹿児島県野球審判協会(鹿児島市)に登録する審判員でなければできない。

 徳之島では毎年春に高校野球の地区大会を行っているが、同協会に登録する審判員の数は年々減少。徳支部長によると15年前には10数人いた審判員は徐々に引退し、現在は島内に6人。全員60歳以上だ。

 県全体でも同様の課題を抱える。県野球審判協会によると、現在同協会に登録している審判員は離島を含む全域で130人。平均年齢はかつては40代が主だったというが、現在は54歳となっている。奄美大島は15人ほど、沖永良部島も同数、喜界島には7~8人という中、徳之島には二つも野球場があり、高校野球も盛んであるにも関わらず、群島内でも少ないのが現状だ。

■仕事と両立、ルール「難しく」

 審判員を担う人材不足の要因の一つは仕事と両立する難しさ。県野球審判協会に登録すると年3回の講習を受けなければならない。離島から通うのが大変な上にほとんどが平日は仕事を抱える「ボランティア」。県高校野球連盟は「最近の若い世代は家庭の時間を大事にする。それも影響しているのでは」と指摘する。

 加えて「ルールが難しい」という印象も敷居を上げる。同協会の藤元真一審判長(69)=鹿児島市=は「ルールを知らないと言う野球経験者は少なくない。ルールは審判任せという選手もコーチも多いのが実情」と話す。県高野連も「審判といってもボールとストライクだけを見ているわけじゃない。好きな気持ちだけでできる仕事ではない」と厳しさを語る。

■球児育む奥深さ

 2月、徳之島に招かれた大阪府在住の審判員田中信吾さん(33)=鹿児島市出身。30代前半の若手ながら、審判員の魅力を「離島の公立高が本土の私立高を倒して決勝に上がってくる試合は本当にすごい。同じ場面に立ちたい。そこでジャッジをしてみたい。彼らの純粋な野球を通した涙や笑顔に感動をもらいたい。審判員は球場の『特等席』」と語った。

 プレー中の選手を誰よりも身近で感じ、時にはタイムを取って選手に声を掛け、励ます。「選手にもっと野球を好きになってもらうことも審判の役割」と言う。

 徳支部長は語る。「審判で得た感動が日常の仕事の励みになる。多くの試合を経験して誠実に判定していけば必ず信頼される審判員になる。まずは勇気を出して一歩を」

 徳之島町で開かれた野球審判講話会で、審判員の魅力を伝えた田中信吾さん(左から4人目)と徳範文支部長(同3人目)=2月22日、徳之島町生涯学習センター

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