鹿児島県奄美群島各地で野鳥のひなが巣立ちの時期を迎えている。飛び慣れず、地面に落ちてしまったひなが懸命に鳴く姿を見かける場面もあるが、奄美いんまや動物病院(龍郷町)の伊藤圭子獣医師や日本鳥類保護連盟(東京都杉並区)は「ヒナを拾わないで」と呼び掛けている。
同連盟は「ひなが一羽でいるように見えても、必ず近くに親鳥がいる。人間が近くにいると、親鳥はひなに近寄れない。自然で生きていくために、餌の捕り方や身の守り方を親から教わることが必要」と説明し「ひなを思う気持ちから思わず拾ってあげたくなるかもしれないが、手を出さず、その場をそっと離れて。それが野鳥の『子育て支援』につながる」と発信している。
この春、伊藤獣医師のもとにも「ひなが飛べないようだ」との相談が複数あったが、元の場所へ戻すよう伝えたところ、すぐに親鳥が迎えに来たというケースがほとんどだったという。
「『鳥たちの心理』を置いていかないで。心配かもしれないが、親鳥はそれ以上に命を賭して育て、心配している。ひなは必死で親を呼んでいる。そのままにしておく勇気と優しさを持ってほしい」と呼び掛ける伊藤獣医師。「親鳥がすぐそばで亡くなっている場合や、判断に悩むときは、その場で連絡を」と話している。
けがをした野生生物を発見した場合、国や県の許可なく保護することは「鳥獣の保護および管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」違反となるため、まずは行政などへ連絡を。事故でけがをした動物を負担の少ない搬送ができる「どうぶつレスキューボックス」も奄美いんまや動物病院などで販売している。