中世のグスク時代の遺跡とみられる鹿児島県徳之島・伊仙町のミンツキ集落跡遺跡について、8月下旬から発掘調査を行ってきた熊本大学考古学研究室は3日、地域の関係者を招いた現地説明会を開いた。発掘作業を行った学生が地元住民らに、発掘した水田跡や土器、陶器類を紹介。グスク時代から近世にかけての研究史料としての価値を強調した。
同遺跡は、町役場から約300メートル北の老人ホームに隣接しており、1975年の土地改良工事で土器や陶器など多数の遺物が発見された。琉球王国が成立する以前のグスク時代の遺跡と考えられており、発掘調査は初めて。
同研究室は74年に設立され、奄美・沖縄などの南島考古学の研究に取り組んでいる。今回の調査は学生の夏季実習として実施。学生ら計17人が8月23日に来島し、約2週間かけて発掘した。
調査では縦、横5メートルの区画を約80センチ掘り下げ、近世の水田跡とみられる地層を発見。さらに約50センチ下からも、水田の跡や約1000年前に奄美・沖縄地域で日常的に使われていたカムィヤキとみられる土器が見つかった。上層で発見された陶器類が見つかっていないことから、下層部はさらに古いグスク時代の遺構とみている。
調査チームのリーダーを務めた熊本大3年の若藤佑季さん(20)は「発掘はすべて手作業なので大変だった」と調査を振り返りつつ、「昔の人々の生活の痕跡を掘り当てられた。成果をしっかりとまとめて報告したい」と笑顔を見せた。
同遺跡は国指定史跡の「カムィヤキ陶器窯跡」と直線距離で約2キロと近く、両遺跡の関係性にも今後注目が高まる。同研究室の久保田慎二准教授(45)は「東アジアの農耕がどのように広がっていったかが分かる可能性がある」と今後の研究の進展に期待した。