鹿児島県の奄美大島と徳之島だけに生息する国の特別天然記念物アマミノクロウサギの救護と野生復帰に向け、関係機関が締結した連携協定後、初の放獣事例が実現した。個体は交通事故に遭い治療を受けた後、奄美大島の大和村にあるアマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)で状態確認とリハビリを行っていた雌1匹。リハビリに当たった豊田英人獣医師は「情報共有がスムーズに行えたことが連携協定の効果」と話し、今後はリハビリ体制の強化を図る考えを示した。
連携協定は昨年4月、環境省や大和村、奄美大島・徳之島の動物病院など6機関で締結された。クロウサギはマングースやノネコ(野生化した猫)など外来種対策の進展により近年、生息数や生息域が回復している一方、交通事故の増加が課題となっている。
個体は昨年12月8日、奄美市名瀬根瀬部の県道沿いで交通事故に遭った。くるぐるによると、宮古崎トンネルを出て約30~40メートル付近の大和村側から名瀬方面に向かう車線で事故に遭ったとみられ、出血してうずくまっていた。

くるぐるに移送されるアマミノクロウサギ=1月29日、大和村(提供写真)
治療を行ったのは奄美市名瀬の奄美野生動物医学センター。検査の結果、骨折はなく脳振とうの可能性が高いと判断された。1月29日にくるぐるへ移送され、リハビリが始まった。
放獣の判断基準は①活動時間にずれがない②運動機能に異常がない③巣穴内で落ち着いて過ごしている―の3点。加えて、餌の摂取量やふんの状態も確認した。
放獣は今月10日、発見現場近くで実施したが、再び事故に遭わないよう県道沿いを避け、山側へ移動した地点を選定した。
豊田獣医師は「今回、野生復帰前に広いスペースでリハビリを行う重要性が確認できた。くるぐるにとって放獣は初の経験だったが、関係各所の専門家の助言が大きな支えとなった」と語った。
一方、交通事故が増加傾向にある現状について、くるぐるを管轄する大和村企画観光課の白石大晴主事補は「今回は運よく放獣できたが、多くの個体は事故に遭うと命を落としてしまう。これまで見掛けなかった国道や県道沿いでも注意して運転してほしい」と呼び掛けた。

リハビリを終え、交通事故に遭った場所付近で放たれるアマミノクロウサギ=2月10日、奄美市名瀬(提供写真)

