鹿児島県の徳之島3町は、バスやタクシーがいない交通空白地をカバーするため、一般ドライバーが一般車両で有償運送するのを認める「公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)」を11月1日から、それぞれ独自に実証運行する。児童生徒の部活や高齢者の買い物、観光客など各町とも多様なニーズを想定しており、「移動の足」として期待が寄せられる。
●徳之島
運行主体となる徳之島町は一般社団法人「とくのしま社中」に業務委託。ドライバーは同法人の職員か地域住民が担い、町の公用車を使用する。
利用区域は手々から母間。亀津まで延伸するかを検討中で、10月下旬までに広報する。1時間前までの予約が必要で、平日のみの運行だが夜間も午後10時まで利用可能。タクシーのようにどこからでも乗車できる。料金は午後5時までが一人1回500円。それ以降は一人1回700円
9月24日に開かれた会議で出席者は、祝祭日に行事が集中するため、休日運行の需要が高いことを強調。また高齢者や障がい者、学生割引の導入も検討すべきでは、との声も上がった。
●伊仙町
運行主体となる伊仙町は一般社団法人「長寿子宝社」へ業務委託。ドライバーは同法人の職員が担当し、車両は町所有のハイエース(10人乗り)3台と長寿子宝社の軽自動車1台を使用する
同町はバスのように乗車場所が決まっているのが特徴。集落の公民館や商業施設など41カ所を「ミーティングポイント」に設定。利用者は2日前までに電話予約し、希望のミーティングポイントに行き乗車する。運行は祝祭日も含むが、日中のみ。料金は一律300円。小中学生や75歳以上などは一律100円。
24日にあった会議では出席者から、「朝の運行時間が遅く通学に間に合わない」といった声や「町外への遠征にも使いたい」などの要望が出された。長寿子宝社からは乗客の年齢の確認方法や介助が必要な乗客への対応についての質問もあった。
●天城町
運行主体となる天城町は日中の運行を徳之島総合陸運、夜間の運行を天城町商工会へ業務委託。ドライバーは、日中は総合陸運の社員、夜間は商工会の職員らが務める。
同町もタクシーのように「ドアトゥドア」で運行。日中は1時間前までの電話予約が必要で、夜間の利用には前日の午後5時までに予約が必要。夜間の運行は午後11時までで、木、金、土曜日のみ。料金は日中一人1回500円。夜間は1回700円の前払い制。
25日の会議では、往復の利用時には往路・復路の2回利用とすることを確認。団体の観光客などにどう対応するかなどを協議した。
県総合政策部交通政策課の鈴木圭祐課長は「地域それぞれに異なるニーズがあると思う。実証事業を通して出てくる課題を検証していくことが重要。まずは実施に向けて機運を高めていくことが大切だ」と話している。

乗車場所のミーティングポイントを示しながら協議された伊仙町地域公共交通会議=9月24日、伊仙町役場