祭祀「シニグ」を調査 島内外の研究者ら29人が協力 与論島

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 五穀豊穣(ほうじょう)などを願う祭祀(さいし)「シニグ」の調査が6~10日、鹿児島県与論島で行われた。島内外の研究者ら29人で調査隊を構成。祭祀規模の縮小化が進む中、現存する11のシニグを執り行う祭場「サークラ」の映像を記録、聞き取りなどを行い、今後のさらなる島の民俗文化研究の進展に意欲を高めた。

 シニグは隔年の旧暦7月17日(今年は新暦9月8日)に行われる。地縁、血縁で集まった人々が旗や弓を用いた儀式を行い、神に豊作や島の安寧を祈願する。

 調査隊事務局によると、シニグの名称を持つ祭りは与論島のほか、沖縄・国頭村など限られた地域にしか伝承されておらず、これまでの調査でもすべてが明らかになるには至っていないという。与論島では、次回以降の開催がさらに規模の縮小が見込まれるため、与論郷土研究会や町教育委員会などが調査事業の実施を呼び掛けた。

 今回の調査はサークラとシニグの現状把握のため、全シニグの映像記録が主な目的。6日の祭祀準備から7日の前夜祭、8日の本祭、10日の直会(なおらい)やサークラ直しまで行われた。

 9日には町役場多目的ホールで報告会を開き、各サークラ調査の情報共有を図った。

 鹿児島国際大学名誉教授で鹿児島民俗学会の松原武実会長は「現存するサークラ、シニグの全部を見ることができた。研究はこれから。既に大きく変質し、伝承も断片的。地元の方が記録を積み重ねてほしい。島外者のシニグに対する関心も高まったと思う。これを機に、シニグ研究、与論研究を盛り上げていきたい」と述べた。

 与論郷土研究会の麓才良会長は「今回皆さまに調査いただいたことで、各サークラで祭祀を行っている当事者がシニグには非常に高い価値があるのではないかという意識を持つ第一歩となった。これが広がっていくと思う」と調査協力に感謝した。

 調査成果は今後、民俗文化財を管轄する町教育委員会に提供、集約され、町内外の関係者の研究に提供。島民の歴史文化への理解にもつなげるとしている。

 ニッチェサークラに参加していた川内陽吉さん(97)は「昔は朝戸だけで5カ所ぐらいのサークラがあったが、今はここだけ。昔をしのび、現在を楽しむ。楽しみということで、続けていってほしい」と語った。

島内外の研究者らが参加して行われた与論島の祭祀(さいし)「シニグ」調査=8日、与論町朝戸

 

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