鹿児島県徳之島最北端に位置する手々(てて)集落(村山佐ヱ明区長、62世帯87人)で15日、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る伝統行事「ムチタボリ」が行われた。送り盆の夜に踊り手の浴衣や白いマントが舞い、集落がにぎわった。
ムチタボリは「餅を下さい」という意味の歌を歌い踊りながら家々を回る伝統行事。300年前から伝わると言われ、県の無形民俗文化財に指定されている。
男性の踊り連が頭からかぶる白い布は、村山区長によると明治時代の警察官から派生しており「マント」と呼ばれ、左手にする紅白柄の棒は「警棒」とされる。
踊り連は午後8時に手々小中学校を出発。「殿地」と呼ばれる家を皮切りに5軒の家々を回り、最後は再び同校校庭へ。男女が二重の輪になり、男性連はマントをひらひらと翻しながら舞い踊った。
60~70代の踊り手たちは「昔は一軒残さず回った」「子どものころは眠くなりながら午前3時ごろまで踊った」「抱えきれないほど餅をもらった」と口にしながら数十年前を回顧。少子高齢化が進む中、担い手となっている移住8年目の川口裕美子さん(41)は「大切な行事。いつまで残せるか気になっている」と話し、村山区長(74)は「現状を維持し未来に伝えていけるよう取り組んでいきたい」と話した。

家を回って踊る「ムチタボリ」=15日、徳之島町手々