アマミノクロウサギ保護・治療、生態解明へ 大和村=研究飼育施設「QuruGuru」開所

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 国の特別天然記念物アマミノクロウサギの研究飼育施設「アマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)」が20日、鹿児島県奄美大島・大和村思勝(おんがち)にオープンした。同日は開所式があり、民間や行政、学校関係者ら約90人が参加して開所を祝った。式後は、村内外から無料招待された75人が施設内を見学。クロウサギを間近で観察したほか、交通事故での死傷例が後を絶たない現状などの課題を確認し、希少な生き物を守り、次世代へつなげる意識を新たにした。

 施設は村が運営。人とクロウサギを中心とした希少動物との共生・共存、個体の野生復帰を目指し、子どもたちへの環境教育も行う。環境省野生生物保護センターに隣接し、敷地面積3159平方メートル、延べ床面積789平方メートルの鉄筋コンクリート造一部2階建て。国の奄美群島成長戦略推進交付金を活用し、総事業費約8億2700万円。名称の「くるぐる」は「黒々とした」という意味の奄美大島の方言や、命がつながっていく様子をイメージして命名された。

 開所式で伊集院幼村長は、クロウサギの個体数が回復傾向にある一方で交通事故件数は増加している現状に触れ、「アマミノクロウサギの保護は、われわれが今取り組むべき喫緊の課題。施設が人とクロウサギを中心とした希少動物との共生に寄与することを期待する」と述べた。

 名誉館長の山田文雄氏は「このようなウサギに特化した保護、研究、展示施設は世界的にも珍しく、貴重。大和村をはじめ奄美大島、島外、世界の皆さまから愛され、信頼される施設になると考えている」。塩田康一知事は「今後、クロウサギの治療や生態解明を通じて保護活動がより一層推進され、多くの方が人と生き物の共生について楽しく学び、環境教育に貢献いただけることを期待している」と述べ、開所を祝った。

「アマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)」の開所を祝いテープカットを行う関係者=20日、大和村

 式後、招待客はクロウサギにまつわる昔話を映像や音声で楽しめる展示や、クロウサギの目線で夜の森を模擬体験する展示、屋外飼育場、昼夜逆転した環境で日中でもクロウサギの姿を間近で見ることができる屋内飼育場などを見学。模擬体験展示ではロードキルや野生化した猫、ハブの危険を体験型で学ぶことができ、同村戸円から訪れた児童は「交通事故でけがをしたクロウサギがいると知って、将来は優しい運転をしてクロウサギを守りたいと思った」と話した。

 くるぐるの営業時間は午前9時半~午後4時半(最終入館4時)。月曜定休。入館料は一般千円、子ども700円、未就学児無料。奄美大島や大和村在住者は割引がある。

クロウサギ「ユワン」が飼育されている屋外飼育場を見学する招待客=20日、大和村

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