
アマミトゲネズミ
○ピンポン玉のように跳ねる アマミトゲネズミ
奄美大島、徳之島、沖縄島北部にはそれぞれアマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オキナワトゲネズミが分布している。トゲネズミの仲間は、世界でこの3種だけ。
アマミトゲネズミは森林内に生息しており、主に夜間に活動する。動きが速く、ピンポン玉のように跳ねながら移動する。オキナワトゲネズミは、夏に活動時間が夜から昼にシフトすることが報告されているが、奄美大島ではこのような学術報告はされていない。徳之島では沖縄島と似たような傾向があると島民から聞いている。
2023年の春頃から観察しやすい状況が続いていたが、2024年夏以降は観察頻度が低くなった。小型のネズミ類は個体数の増減が大きいことが知られているが、主要な餌として知られるシイの実が2年連続で凶作だったことも影響している可能性が考えられる。
トゲネズミは話題が多い。性決定メカニズム、天敵から攻撃をかわす行動、動物園飼育など、紹介したい内容は盛りだくさんなので、またの機会にお伝えしたい。

アマミカヤラン
○幹に根を張る アマミカヤラン
日本国内では奄美大島の奥深い森林だけに生育するアマミカヤラン。樹木の幹に根を張る着生ランである。3月頃から黄色い花を咲かせ、周囲にはほんのりとした芳香を漂わせる。かつては台湾などに分布するケイタオフウランと同種とされていたが、ヒマラヤに分布する別の種と同じ種であることが判明し、日本本土のカヤランと似ていることから、アマミカヤランという新たな和名がつけられた。
着生ランといえば、種にもよるが大きな樹木の高いところに着いている印象が強い。私は着生ランを見つけるのはあまり得意ではなく、同行者から教えてもらうことが多い。しかし、アマミカヤランは胸の高さの木の直径が10㌢にも満たないような小さな木の目線高に着生していることがしばしばある。ついつい立派な木の高いところを探そうとすると、見落としてしまうだろう。「こんな小さな木に着生して大丈夫なのか」と思ってしまうが、きっとアマミカヤランにとっては最適な環境なのであろう。