鹿児島県奄美大島・龍郷町戸口の金井工芸で大島紬の泥染めなどを手掛ける〝染色人〟の金井志人さん(45)が、ニュージーランド・ウェリントン地方のカピティ海洋保護区にあるアートギャラリー「Toi MAHARA」で展示会「!Nature Amami Oshima!」を開いている。期間は2月14日から6月1日まで。大島紬や泥染め・草木染めのアート作品などを展示し、奄美の染織工芸を海外に発信している。
今回の展示会は、カピティ海洋保護区在住の染織アーティストが2023年に金井工芸を訪れた縁で開催。金井さんは2月4~18日に同保護区などに滞在し、展示準備や現地作家とのコラボ、ワークショップ、文化交流を行った。
展示内容は計25点で、本場奄美大島紬協同組合が所蔵する100年以上前の大島紬や芭蕉布の古代布、さまざまな素材を用いた各種染め(泥、フクギ、ヒカゲヘゴ、藍など)作品、日本の作家と共同で制作した大島紬のコートなど。
金井さんが現地アーティスト7人と共同制作した作品も展示している。「七夕」をコンセプトに、それぞれの願いを表現した。
一般向けのワークショップでは、現地の植物を使って風呂敷を染める体験活動を実施。展示会2日目にはギャラリートークも開き、出展作品や大島紬の染織技術・製造工程などを解説した。
滞在中、金井さんは先住民・マオリ族の伝統的な染織技術を継承する職人らとも交流。大島紬と共通の原理で黒をつくり出すマオリ族の泥染め技法や、伝統織物に使う繊維素材などについて学んだという。
「自然保護の意識が強い国。繊維など材料を大事に扱っており、産業ベースで考える日本とはまた違う価値観があった。(奄美の染織工芸を)新たな視点で見てみるのも面白いかもしれない」と金井さん。
「現地の人たちは緻密な織物に対する理解が早く、黒に染めることが大変だということも分かっており奄美の染織工芸への評価が高かった。今回の文化交流を何かしら奄美に還元できたら」と期待した。

金井志人さんがニュージーランドで開いている展示会(提供写真)