識別が難しい渡り鳥 トラツグミ
冬になると、奄美大島には種類、数ともに多くの渡り鳥がやってくる。今年は特にシロハラの渡来数が多い。昨年はほとんど見かける機会がなかっただけに、年による違いは大きいことがわかる。奄美大島にはオオトラツグミという固有種が生息しているが、秋から春にかけては渡り鳥のトラツグミも少数見られる。
オオトラツグミとトラツグミの見た目を識別するのは非常に難しい。尾羽の枚数が異なる、オオトラツグミの方が嘴(くちばし)が太く、お腹のうろこ状の模様が大きいなどの違いは挙げられるが、野外で姿を見て「識別できるか」と言われれば、私も自信がない。
活動する環境にはある程度の違いが見られる。オオトラツグミは自然度の高い森林内の林床で活動していることが多い。一方、トラツグミは平地の林縁部で見られることが多い。最近、オオトラツグミの個体数が増加してきていて、平地で観察されることもあるので、確実な方法とは言えないが、識別する際の参考にしていだたきたい。

トラツグミ
ごくわずかに確認 アマミアセビ
世界で奄美大島だけに分布する、いわゆる奄美大島固有種は、動物よりも植物の方が多い。これらは法律や条例などで採集等が禁じられている種がほとんどで、アマミセイシカ、アマミナツトウダイなどが挙げられる。環境省により国内希少野生動植物種や絶滅危惧種に選定されているものも多い。
アマミアセビも奄美大島固有種の一種である。以前は沖縄島産と同じくリュウキュウアセビとされていたが、2010年に奄美大島産のものはアマミアセビとなった。民家で植栽されているものを見かけることはあるが、野生の株は非常に少ない。現在、絶滅危惧種のランクが最も高いとされている絶滅危惧ⅠA類となっているが、その上には「絶滅」「野生絶滅」というものが存在する。アマミアセビは少し前まで「野生絶滅」したのではないかといわれる時代があったほどだ。
今は奄美大島の森林内でごくわずかに生育が確認されている。毎年、花の時期になると観察へ行くのが楽しみであるが、こちらも渡り鳥の渡来数と同じように、年による花付きは違いが大きい。

アマミアセビ
(奄美博物館)