鹿児島県奄美大島と加計呂麻島を隔てる大島海峡で海底熟成ワインセラー事業に取り組む「III Three(アイスリー)」(東京都、森谷悠以代表取締役)はこのほど、顧客から預かったワインを海底で熟成させる「MY SEA CELLAR(マイ・シー・セラー)」サービスを新たに開始した。瀬戸内町の清水海岸沖で9日、同サービス第1弾の設置作業が行われ、契約者らが見守る中で約200本のワインを海底に沈めた。
海底熟成は欧米を中心に注目されている貯蔵方法。水温や水圧、振動などで熟成が進み、長期間寝かせたようなまろやかな味わいが生まれるという。大島海峡は潮流が穏やかで、海水温が一定であることから、ワインの熟成に適した環境とされる。
同社は2018年から同地で事業を展開。町役場や漁協に協力を仰ぎ、24年7月、初の商品化にこぎつけた。奄美の海洋環境を生かした新たなワイン価値の創出の他、漁礁や藻場機能を備えた独自専用ラックの開発等で生態系の保全に努めるなど、持続的な地域活性化にも取り組んでいる。
今回は、追い込み漁に従事する地元ダイバー3人が海へ潜り、MY SEA CELLAR契約者の1ラック(12本)に加え、昨年11月に同町ふるさと納税返礼品に登録された「tlass SEA CELLAR(トラス・シー・セラー)」の25年版(赤・白・スパークリング3種)や調査用の約180本を水深約20メートルの海底に沈めた。約半年間寝かせた後、7月下旬ごろに契約者をはじめ、同町ふるさと納税や同社サイトなどを通して消費者の手元に届けられる。
契約者第1号で別荘兼ホテルのシェア販売事業を奄美大島3カ所で始める「UMITO(ウミト)」(東京都)の堀鉄平代表取締役(48)は「弊社の商品は『海』に特化しており、保全の視点に魅かれた。海底ワインセラーの権利付きでオーナーへ販売する予定で、ただワインを味わうだけでなく、引き揚げ作業など奄美の海に潜る体験型にもつなげたい」と話した。
III Threeの森谷代表(39)は「当初、海水温の高さが少し不安だったが、かえってワインに良い影響を与えている。第2弾は、培った多くの知識で、より精度の高い熟成ワインができると思う。事業主軸の預かりサービスの開始もうれしく、瀬戸内の地を選んで良かった」と述べた。