鹿児島県大島郡瀬戸内町の手安沖で6月7日夜、サンゴの一斉産卵が確認された。奄美海洋生物研究会会長で自然写真家の興克樹さん(52)=奄美市名瀬=が撮影。卵と精子の入った直径0・5ミリほどの淡いピンク色のカプセル(バンドル)が粉雪のように無数に漂い、夜の海を幻想的に彩った。
サンゴは初夏の満月の前後に一斉に産卵するといわれる。興さんは台風一過の6月3日から観察を始め、満月から3日目の8日に樹枝状のミドリイシ属のサンゴ5種の一斉産卵を確認した。サンゴが放出したバンドルは海面ではじけ、誕生した幼生は数日から数週間浮遊して海底にたどり着き、サンゴとして成長していく。
興さんによると、奄美大島では2000~08年にオニヒトデが大発生し多くのサンゴが失われたが、現在は全体的に回復傾向にある。また比較的海水温の低い瀬戸内町の大島海峡のサンゴは白化現象の影響を受けにくく、オニヒトデの食害が少なかった樹枝状ミドリイシの大群落が生存しているという。
興さんは「産卵ピーク時には前が見えないほどで、力強いサンゴの命の営みに感動した。サンゴの回復が遅れている海域でも多くのサンゴ幼生の定着を期待している」とコメントした。