旧暦8月のアラセツ(新節)から数えて7日目に当たる15日は「シバサシ」の祭り日。鹿児島県の奄美群島には屋敷の軒などに「シバ」と呼ばれるススキなどの植物を差す風習があり、奄美大島の龍郷町秋名・幾里地区では住民が自宅の玄関や畑にシバを飾り災いを払った。
シバサシは、旧暦8月初丙(はつひのえ)の日の「アラセツ」後、壬(みずのえ)の日に行う。奄美ではアラセツとシバサシ、その後の甲(きのえ)の日の「ドゥンガ」を合わせた一連の行事を「ミハチガツ」と呼び、稲の収穫に感謝し五穀豊穣を祈願する。
ミハチガツのそれぞれ祭り日の前日を「ツカリ」という。ツカリ日の夕方と祭り日の朝には、各家庭でコウソガナシ(屋敷の守り神)にごちそうを供えて家内安全を祈る風習もある。
同町幾里の窪田圭喜さん(83)は、地域に昔から伝わる方法でシバサシを祝った。14日はツカリのお供え物を用意し、門の前で牛ふんともみ殻などを燃やして悪病が入ってこないよう魔よけを行った。
15日は午前10時ごろ、玄関先と畑の目立つ場所にシバ(トキワススキ)を飾った。シバを差した後は仕事をせずに休業するのが習わし。台風から一夜明けたこの日、窪田さんは落ち葉や小枝で散らかった自宅周辺の片づけを済ませてからシバサシを行った。
窪田さんは「農作業には土日休みがないから、体を休めるための知恵だったのだろう。(生活様式が変わり)シバサシをやる家は少なくなっている」と話した。