"めちゃくちゃいい島"で挑むのは、人生を変えた珈琲つくり(後編)

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プロローグ

伊仙町の、地域おこし協力隊として活動が始まった宮出博史さん。現在は珈琲の栽培を続けながら新たなチャレンジを続けている。珈琲作りに“日本で最も適した島”だというこの島は、宮出さんの目にどのように写っているのか?今後の未来ビジョンも合わせてお話しを伺った。

インタビュー:満崎千鶴 撮影:高比良有城 取材日2020年10月

尊い文化を大切にする素晴らしい島

伊仙町に移住して早2年。それまで十数年、この島に関わり続けてはいたが、実際に移り住むことには多少の不安もあったという。
「徳之島は沖縄と違ってお店が多い訳でもないし、正直、島の生活に飽きてすぐに逃げ出してしまうのではないか?と不安でしたね。しかし、“住めば都”というように、飛び込んでみると意外と新しい発見が多く楽しくて。一週間もすれば島の生活にもすっかり慣れてしまいました。私はこの島がめっちゃ好きです!(笑)苦手なところもあったりするけどめっちゃ好き!伊仙町の人たちは、“変化球”なんか使わず真っ直ぐな人たちが多いから、とてもやりやすいですね。島の文化も大切に育んでいるし。例えば『闘牛』とか。

闘牛場でトレーニングを行う牛。来年のお正月がデビュー戦なんだとか。

闘牛場でトレーニングを行う牛。来年のお正月がデビュー戦なんだとか。

伊仙町は、特に闘牛文化が熱くみんな誇りに思っています。子供たちが大きな牛を引き、散歩させている姿を見ると、“島の大切な文化”としてしっかり根付いていて素敵だな〜って思います。

牛を引く高校生

牛を引く高校生

自分には真似できない分、羨ましいな〜と思いながら見ています(笑)。大人も子供も生き物に間近で接しながらしっかり命と向き合って過ごすことが何よりの教育であると私は思います。」と話す宮出さんに、地域に溶け込むためのコツを聞いてみると即答で答える。

「毎月一回のクリーン作戦!これですね!都会ではありえないことだと思いますが、伊仙町では月に一度、みんな集まって町内の清掃作業を行うのです。地域のイベントに積極的に参加し、自ら町の人たちと交流を深める努力をすることが最大の秘訣であり、何より大切。あとは、笑顔で挨拶できればオッケー!」
まるで生まれ育った故郷のことを話すかのように目を細め、嬉しそうに語る宮出さんは、すっかり伊仙町の一員となっていた。

副産物を島の特産品に

地域おこし協力隊に所属し、昨年一昨年は地域の方たちと協力し合いながら1万本ほど珈琲の苗を栽培したという。

一本一本手作業で丁寧に植えつける

一本一本手作業で丁寧に植えつける

栽培の次は精製する技術を身につける事に注力し、何とかその精製技術も備わったそうだ。そして現在、宮出さんが新たにチャレンジしているのは、豆だけではなくお花や果肉、果汁・葉っぱに至るまで全てを無駄にすることなく有効活用するための技術を身につけること。

グァバの葉を干す宮出さん

グァバの葉を干す宮出さん

「珈琲に限らずマンゴーやグァバといった果物も、実だけではなくそれ以外の部分も商品化し、島の特産品に出来るようにと開発を行なっています。例えば、干すだけではあまり美味しくなかったグァバの葉を、よりフルーティーに飲みやすく!それがやっぱり発酵だったりする訳です。発酵させたらなんでも美味しくできちゃう!!(笑)珈琲だけではなく、副産物もこの場所で作る事が出来たらいいなと思っています。」
宮出さんが話す、“この場所”とは、伊仙町の閉鎖されたプール。

現在宮出さんは閉鎖されたプールを伊仙町からお借りし活動拠点にしている

現在宮出さんは閉鎖されたプールを伊仙町からお借りし活動拠点にしている

この広い敷地を伊仙町から借りて拠点にしている。
「こうして、使われなくなったプールにも新たな利用価値が生まれると面白いじゃないですか。

めちゃくちゃいい島”で挑むのは、人生を変えた珈琲つくり(前編)

こうして、僕らのアイデアで様々なモノ・コトに新たな価値を生み出すことが出来ればいいなと。昨日、プールの周りに中学生の卒業記念として珈琲の苗を植えました。

めちゃくちゃいい島”で挑むのは、人生を変えた珈琲つくり(前編)

あの子たちが成人を迎える日、自分たちの珈琲で乾杯できたら素敵ですよね!こんなアイデアが沢山あるけれど、私の体は一つしかないから、もっともっと“一緒にやろうよ!”って仲間が増えてくれたら嬉しい。」
地域おこし協力隊の任務を終えても、ずっとずっとこの島に関わり続けることが出来たらいいな、と話す宮出さんの目には、この町(伊仙町)、この島に、まだまだ眠る宝が確かに見えているようだった。

生産者と消費者の架け橋に

伊仙町に移り住み間も無く3年。まだまだやりたいことが沢山あると話す宮出さんに、これから先の夢を尋ねた。
「今後の夢は、生産者の方々に寄り添うことが出来る農家になることでしょうか。

まもなく真っ赤に色づき、“チェリー”と呼ばれる珈琲の実

まもなく真っ赤に色づき、“チェリー”と呼ばれる珈琲の実

珈琲のチェリーって、海外の農家さんは1キロ250円くらいで出荷されているんですよね。でも、日本のカフェで珈琲って一杯400〜500円くらいするじゃないですか?

めちゃくちゃいい島”で挑むのは、人生を変えた珈琲つくり(前編)

めちゃくちゃいい島”で挑むのは、人生を変えた珈琲つくり(前編)

一番しんどい思いをして収穫した農家さんは250円しかもらえないのに、不思議と末端のお店に出る時は1キロ3万円に化けているわけです。でもそれって誰が悪いって訳でもなく…。だから私は、もう一度この流れを見つめなおして、生産者に寄り添える人になれたら…と思い研究しています。そのために私の知識と経験があると思っているから。」

自ら珈琲の栽培を行い、長い年月を費やしてきたからこそ分かる作り手の苦悩と喜び。つまづいても決して諦める事のなかった宮出さんだからこそ切り開ける未来がきっとあると私も強く信じている。

仁禮さん かごしま暮らしメモ

かごしま暮らし歴は?

2年半

Iターンした年齢は?

42歳

U•I•Jターンの決め手は?

珈琲作りに注力したかったから。

徳之島の好きなところ

森の中のだんだん畑(珈琲園)

かごしま暮らしを考える同世代へひとこと!

何をしたいか…ビジョンがはっきりしていればとても暮らしやすい島です!観光では知り得ない魅力もたくさんあるし、それはきっと長期滞在してもらえればきっと分かってもらえると思います。ここは無限の可能性を持った島だと私は思っています!

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