鹿児島県奄美大島の大和村にあるアマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)と環境省奄美群島国立公園管理事務所は2月26日、村内で昨年10月に救護し、治療飼育を続けていた国の天然記念物ケナガネズミの親子3匹を村内山中で放獣した。くるぐるによると、飼育下でのケナガネズミの子育ては過去に詳細な記録のない初の事例。
昨年10月28日、大和村防災センター屋外階段3階で衰弱したケナガネズミの成獣1匹と生後間もない幼獣5匹を保護した。発見したのは同センター職員。当初は成獣の姿だけだったが、連絡を受けた環境省職員が到着すると子ネズミが生まれていたという。

保護されたケナガネズミの親子(提供写真)
ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄本島だけに生息する固有種。体長が20~30センチと国内最大のネズミの仲間で、背中の長い毛が名前の由来。尾は胴体より長く、先端部分が白い。夜行性で主に木の上で生活し、木の実や昆虫類、カタツムリなどが主食。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。
保護された親子は、翌日までに子ネズミ3匹が死に、2匹は母ネズミの授乳が確認されたという。母ネズミは2、3日で回復の傾向が見られたが、子ネズミが未熟であることから放獣は困難と判断。木のうろを模した手作りの巣箱などで飼育を継続していた。
放獣に当たっては、今年1月上旬に沖縄で野生動物の救護活動を行うNPO法人「どうぶつたちの病院沖縄」(うるま市)の獣医やスタッフ、環境省を交えた打ち合わせを実施。判断基準として▽しっかり木登りができている▽本来の食性に抵抗がない│ことなどを確認した。放獣場所には巣箱を設置し、3匹はおのおののタイミングで巣を離れたという。
飼育に当たった豊田英人獣医師は「目が開く時期や授乳期間など、子どもの成長経過が今回の飼育を通してすべて観察記録できた。かなり貴重なデータ」と語った。
大和村企画観光課の白石大晴主事補は「市街地で見掛ける機会も増える中、民家への進入は穴をふさぐなどの対策が有効。明らかに物音が大きい場合はケナガネズミの可能性があるため、誤って粘着シート式わなで捕獲して傷つけてしまわないよう注意が必要」。豊田獣医師は「野生動物には手を加えず見守るのが基本だが、生活に支障がある場合は環境省に連絡を」と呼び掛けた。

放獣のため巣箱を設置する職員ら(提供写真)

