鹿児島県奄美大島の瀬戸内町と宇検村がそれぞれ民間などと共同で行うマングローブ植林の取り組みがこのほど、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減量や吸収量を取引可能な形とするカーボンクレジット制度の一つ「Jブルークレジット」の認証を受けた。マングローブ植林を通じた同クレジットの認証、発行は国内初という。
海藻や海草、マングローブなど海の植物がCO2を吸収後、海底や深海に貯留される炭素のことを「ブルーカーボン」と呼び、脱炭素社会の実現や生態系保全に向けて注目されている。

【写真①】干潟に苗木を植え付けるマングローブ植林活動の参加者ら=11月29日、瀬戸内町
同クレジットはブルーカーボンに特化し、CO2排出量の削減に取り組む企業などが、目標に対して自助努力では足りない分を補うために購入することができる。
瀬戸内町では、町や漁協、民間企業などで構成する「瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会」(会長・上田哲生瀬戸内漁業協同組合代表理事組合長)が、2024年の団体設立前から同町小名瀬の干潟でマングローブ苗木の植樹を続けている。
申請書によると、23、24年に地元小中高校などと連携し計790本を植栽。今年8月末までの2年間を対象として、二酸化炭素0・1トンが自然系(吸収源対策)クレジットとして認証された。
上田会長は「認証は、地域の海を守り、未来へつなぐ大きな一歩。漁業者や高校生、行政、企業が一体となって取り組んだ成果が認められたことを誇りに思う」とコメントした。

【写真②】メヒルギの苗木を植える児童ら=2017年12月7日、宇検村(資料写真)
宇検村は14年から活動を続け、地元児童らも参加。21年に大手商社の伊藤忠商事による支援が始まり、23年には村、伊藤忠商事、上智大学、日本航空の4者で環境保全と地域振興に関する連携協定を締結するなど取り組みを広げてきた。
クレジットは23~25年に同村の無人島、枝手久島で計7回実施した計2184本(約1073平方メートル)の植林実績を対象として、0・3トンが認証された。
村企画観光課の辰島月美課長は「目指していた認証を取得できうれしい。豊かな自然環境を次世代に継承し、地域の持続可能な発展を目指す取り組みの一環であり、今後環境学習などにも活用したい」と話した。
同クレジット制度は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が管理運用しており、両自治体のクレジットは今年10月にあった第三者委員会による審査を経て認証、発行された。

