奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は8日までに、鹿児島県奄美大島近海に回遊するマッコウクジラの調査結果(2025年4~10月)をまとめた。発見頭数は192群320頭で、過去に確認されたものと同じ個体も見つかった。興会長は「年間を通して奄美近海に回遊しているとみられ、他海域との共同研究も進んでいる。冬に来遊するザトウクジラと併せ、奄美の新しい観光資源になる」と期待した。
マッコウクジラは角ばった巨大な頭部が特徴で、成体の体長が10メートル以上にもなる大型のクジラ。イカなどを主食とし、成熟した雄は体長15メートルを超す個体もいる。
奄美大島近海では12年から冬季のザトウクジラの観察ツアーが実施されており、25年1~3月は延べ7789人がツアーに参加している。同協会は年間を通したクジラ観察ツアーの展開を目指し、19年にマッコウクジラの調査を開始。大和村~宇検村の沖合約15キロの「奄美海盆」と呼ばれる水深950メートルの海域での生息を明らかにし、23年から本格的なツアーを行っている。
海面からシュノーケリングでマッコウクジラを観察する同ツアーの参加者数は年々増加し、25年は7事業者の合計が過去最多の1365人に上った。ツアー出航日数は108日、発見日数は80日で、発見率は74・1%。発見頭数のうち個別識別頭数は28頭で、このうち13頭は過去にも確認されたことのある個体だった。
興会長によると、観察ツアー内での発見は1頭のみの場合が多いものの、数キロ以内に他の個体がいることが多かった。群れの構成は若い雄個体が多く、次いで若い雌、まれに母子群が出現した。8月下旬からはやや大型の雄個体が出現し、その期間は他の群れの出現が減少する傾向にあった。6月には19個体による大きな群れも見られ、海中で「立ち寝」する様子が話題となった。
奄美クジラ・イルカ協会は長崎県五島列島、沖縄島、小笠原、台湾海域と共同でクジラの尾びれ識別写真の照合を行っており、これらの個体識別調査がマッコウクジラの季節回遊に関する新たな発見につながるのではないかと期待されている。
興会長は「出現状況や個体識別のデータを集積することで詳しい生態や保全に必要な情報が分かってくる。マッコウはザトウとはまた別の魅力があるクジラ。今後もクジラに負担をかけないルールを厳守し、持続可能なツアーの展開を図りたい」と話した。

奄美大島近海で見られたマッコウクジラの群れ=6月23日、奄美大島沖(興克樹さん撮影)

