鹿児島県奄美出身ながら、関東地区でしっかりと根を張り、地域でのボランティア活動や奄美の同窓生たちとの交流に生きがいを見いだしている「シマッチュ」がいる。その一人が、奄美市名瀬出身で、神奈川県横須賀市に暮らす鳥井廣信さん(73)だ。
鳥井さんは奄美市名瀬の金久中学校、県立大島高校の出身。明治大学卒業後は、信用保証協会に勤務。所長を務めた後、65歳で退職した。
だが、自身が暮らす横須賀にある1220世帯の大型集合住宅の自治会長を頼まれて以来、あちこちからの依頼で民生委員や地元の中学校の学校運営協議会委員長、ボランティア団体の役員などを務めている。
「とにかく無類のお人好しで、頼まれたら断る事のできない、根っからの良きシマッチュ」だと同窓生の一人は話す。さらに漁師たちに頼まれれば定置網の修理作業を手伝い、農家に頼まれれば収穫を手伝い、同窓会の世話も率先してやっている。
中学校の学校運営協議会は、いじめや不登校、非行など学校をめぐるさまざまな課題に対し、地域として支える大きな役割を持つ。長く勤めた信用保証協会での業務である中小企業の支援ということでは、やりがいを感じながらも「金にまつわる人の浮き沈みを見てきただけに、世の世知辛さも大いに感じていた」(鳥井さん)だけに、自然とこうした地域や人々を支えるボランティアに身を寄せるようになったのかもしれない。「社会貢献を相手に押し付けてしまうと相手と距離ができてしまう。肩肘張らずに自分らしく自然体でやることがモットーだ」と話す。
鳥井さんが役員を務める大型集合住宅のボランティア団体「ゆいの広場」では、音楽鑑賞などのサークル活動でお年寄りたちが気軽に集まれる地域のコミュニティーづくりに尽力。同団体は昨年、内閣府社会参加章を受賞した。「島の集落なら人々が集まってお茶を飲んだりしているが、都会ではお年寄りは孤独になりがち」と指摘する鳥井さん。都会であってもやはり人とのつながりが最も大切だと話す。
それでも、「島のことを思わない日はない」という鳥井さん。奄美出身の同窓生たちとの交流も盛んだ。毎月1、2回は一緒にゴルフを楽しみ、近くの同窓生家族とは毎週末のように自宅を訪ね合う。「奄美を出て長いが、郷里の友人に恵まれていたからこそ、地域に社会貢献できたと思う」と鳥井さんは話した。

ボランティア団体「ゆいの広場」で話す鳥井廣信さん(提供写真)