鹿児島県奄美大島・龍郷町の秋名・幾里地区で24日、アラセツ(新節)行事の「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」が行われる。前日は「ツカリ」と呼ばれ、23日は地域住民が自宅の縁側にごちそうを供えてコウソガナシを祭り、家内安全を祈った。
ツカリはミハチガツ(三八月)=アラセツ、シバサシ、ドゥンガ=のそれぞれ祭り日前夜に女性が中心となって準備。ミキやお茶のほか、各家庭に伝わるやり方でお供え物を並べる。コウソガナシは、先祖の神や家屋敷の守り神といわれる。
アラセツ前夜は線香を3回あげた後にお供え物をいったん片付け、翌朝の早朝にもう一度並べる。ショチョガマが倒れる前までに、さらに3回焼香を済ませるしきたり。高齢化などにより、ツカリの風習は年々廃れているという。
この日、秋名の作田ヘイ子さん(93)宅には、地域住民など約10人が集った。二つの膳には赤飯や季節の果物、芋もち、島野菜の煮物などごちそうが並んだほか、「悪いもの(悪神)を道に迷わせるため」に、渦巻き状に三つ盛り付けたニラも供えられた。もう一つの膳にはミキや焼酎、お茶、線香が置かれた。
幾里の窪田一仁さん(58)宅では、姉の瀬戸口マキさん(59)=奄美市名瀬=がツカリのお供え物を用意。赤ウルメのから揚げや野菜の煮物、果物に加え、魔除けとして俵状にしたニラを高膳に並べた。
作田さんは「今は一人暮らしだが、昔は大勢でにぎわっていた。きょうはツカリにみんなが来てうれしい。自分ができる範囲でずっと続けていきたい」と笑顔。
瀬戸口さんは亡き父で前秋名アラセツ行事保存会長の窪田圭喜氏をしのび「この地区は地域行事を大事にしている。(父には)若い世代にも伝統が受け継がれているから安心して、と伝えたい」と話した。

アラセツ前夜、ごちそうを供えてコウソガナシを祭る「ツカリ」を行う作田ヘイ子さん(手前)=23日、龍郷町秋名