奄美大島いきものがたり

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初めての論文発表~大学時代編

大学時代に沖縄島で出会ったヤンバルクイナ

 2年間の浪人生活を経て、琉球大学理学部海洋自然科学科生物系に進学したことは、前回述べさせていただいた。学生時代はサークルに属さず、フィールドワークに没頭した。「まずは沖縄県が誇るやんばるの自然を知ろう」。そう思って週3の頻度で通いつめたやんばるでは、沖縄島の希少な固有種を観察・撮影した。ハブがヤンバルクイナを捕食する一部始終を観察して、人生初の論文も発表した。
 2年次からは活動の幅を広げ、知床や小笠原諸島などの世界自然遺産地域を訪れた。アルバイトで旅費を貯めては、生き物観察の旅に出かけていた。3年次からは海外へ進出。初めて訪れた台湾では、全く知らない生き物との出会いに興奮が抑えられなかった。台湾の生き物にハマってしまった私は、卒業までに4回も訪れた。

撮影に苦戦したスリランカヒョウ


 卒業旅行は単身でスリランカへ。どうしても観察したかったスリランカヒョウは、2頭観察できた。ダート道を突き進み、激しく揺れ動くジープの荷台からピントを合わせてシャッターを切るのは至難の業で、残念ながらスリランカヒョウの写真はぶれてしまった。喜びのあまりに武者震いしたことも影響しているかもしれない(笑)。
 ここからは研究室時代の話。3年次の後期からはイリオモテヤマネコを研究されている伊澤雅子教授の研究室に在籍させていただいた。実は入学式の日に伊澤教授の元へあいさつに行った。そのお陰もあって3年次までに西表島などの調査に同行させてもらうことができた。
 当時、沖縄こどもの国(動物園)で飼育されていたケナガネズミを研究対象にすることを決め、24時間365日態勢で録画された映像をくまなくチェックし、活動時間や食性などの基礎的な生態を調べた。4年次には北海道で開催された国際学会でポスター発表をすることになり、苦手な英語に大苦戦しつつ、どうにか研究成果を発表することができた。
 フィールド欲が抑えられず、研究が進められない時期もあったが、無事に卒業することができた。現在は名誉教授になられた伊澤先生とは今でも付き合いが続いている。奄美大島へ来島されるタイミングにあわせて奄美博物館で講演していただいたり、論文を書くときには相談させてもらったりしている。卒業してからも面倒を見てくれる伊澤先生には、感謝以外の言葉が見当たらない。
 大学卒業後は島へ戻ることに決めた。地元の生き物のことをもっと知り、子どもたちにその素晴らしさを伝え、学術的にも貢献したいと思ったからだ。まだまだ実力は伴っていないが、年1本は学術論文を発表している。島に住んでいるからこそ生き物のさまざまな生態に巡り合うチャンスがある。これからも教育普及や調査研究に邁進して、奄美大島の自然の魅力を後世に伝えていきたい。
 幼少期から大学時代までの話は今回で終わりとし、次回からは通常のいきものがたりに戻る。

                                     (平城達哉・奄美博物館)

 

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