大阪府大阪市の人工島・夢洲で開催中の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で5日、世界自然遺産5地域会議主催のプログラム「千の自然・千の時間-私たちと世界自然遺産5地域」があった。各地域の代表者らが登壇し、地域の成り立ちや暮らし、生き物、郷土芸能などを紹介。「共生」や「環境文化」といった人と自然、生き物が調和した日本型自然保護のメッセージを世界へ発信した。
5地域会議は公益財団法人屋久島環境文化財団を事務局に、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島、奄美大島・徳之島・沖縄の国内世界自然遺産地域の関係23市町村などで構成される。
プログラムは▽遺産地域に住む子ども作文コンクール代表作品発表・授賞式▽5地域の大型映像とトーク▽芸能パフォーマンス▽国際シンポジウム▽クロージング-の5部構成。フリーアナウンサーの有働由美子さんが総合司会を務めた。
映像・トークでは、それぞれの地域の特徴を解説する自然映像の上映と代表者による発表。奄美大島・徳之島からは奄美市立奄美博物館学芸員の平城達哉さん(33)が登壇し、アマミノクロウサギなどの哺乳類から鳥類、両生類、昆虫類、維管束植物まで多種多様な生き物を紹介。外来種や密猟、ロードキル(動物の交通事故死)などの問題や自然保全の取り組みについても伝えた。発表を終え、平城さんは「楽しく発表できた。ここ(奄美)だけにしかいない生き物がいることが伝われば」と笑顔を見せた。

奄美大島・徳之島の生き物などを紹介した平城達哉さん=5日、大阪府大阪市夢洲地区
4地域が参加した芸能パフォーマンスのラストを飾った奄美大島・徳之島地域は、唄者の里朋樹さん(35)=瀬戸内町=による島唄「朝花節」で幕開け。関西奄美会から約60人が加わり、八月踊り、豊年節と続き、最後はワイド節と六調で締めくくった。来場者も参加するなど、会場は大いに盛り上がった。
ステージ後、里さんは「楽しかった。世界に誇れるものを先人たちが残してくれたと改めて感じた」と語り、関西奄美会の先山和子会長(78)は「世界に奄美をPRする機会に恵まれて光栄。踊りは喜びの表現。みんなが笑顔でつながった」と語った。
国際シンポジウムのテーマは「世界自然遺産を引き継ぎ生かす」。人類学者や生態学者らが登壇し、人と自然の関わりを学ぶことの重要性などを議論した。
クロージングでは各地域の首長らがあいさつ。奄美大島・徳之島を代表し、安田壮平奄美市長が「世界自然遺産を守ることは、先人たちが大事にしてきた価値観を守ること」と力を込めた。
最後は5地域会議の総意として国内外に向けたメッセージを発表。科学技術の革命的進展が、自らの存立基盤である自然環境をおびやかすもろ刃の剣であることに無自覚だったとし、「一人一人が何をなすべきかを考え、互いの知恵を結集し、協力の環(わ)を拡(ひろ)げよう」と訴えた。

島唄や八月踊りを披露した里朋樹さんと関西奄美会の芸能パフォーマンス=5日、大阪府大阪市夢洲地区