鹿児島県喜界島で保護猫の譲渡活動などを行う民間ボランティア「にゃんだふるらいふ喜界島」(中山亜沙美代表)は5日、喜界町早町に「島のどうぶつ診察室」を開所した。町内の公民館を借りて行っていた犬や猫の出張診療や不妊手術を同所で行う。中山代表は「受診の敷居を低くし、予防接種や適正飼養の意識向上につなげたい」と話している。
動物病院がない喜界島では、龍郷町の伊藤圭子獣医師(奄美いんまや動物病院院長)が2カ月に1度、不妊手術に対応できる車両と共にフェリーで来島し、診察を行っていた。「島に施設があれば先生が飛行機で来島でき、診察も増やせる」と中山代表らが奮起。昨年秋に公益財団法人JAC環境動物保護財団の助成対象となり、準備を進めてきた。
診察室の建物は喜界徳洲会病院の発熱外来として使用されていたプレハブを譲り受け、早町郵便局近隣にオープン。麻酔や血液検査などの機器を備える。伊藤獣医師と喜界町在住で動物看護師経験のある園田優子さん(36)らが診療を行う。今後は不妊手術のため捕獲した野良猫の待機所を設け、伊藤獣医師の来島頻度を増やし、オンライン診療なども可能か、検討していきたいという。
中山代表は「無事に形になりほっとした。飼い主さんたちの期待に応えたい」と笑顔。伊藤獣医師も「島で診療していることを知らない人も多く、予防の意識も低い。(家族であるペットのために)できることはもっとあるよ、と知ってほしい」と語った。
三毛猫のシシーと診察に訪れた平政信さん(38)=赤連=は「何かあれば奄美大島まで通っていたが金銭面やシシー自身の負担もあった。島に診察室ができて安心」と話した。

【写真】喜界町に開所した「島のどうぶつ診察室」で診療を行う伊藤獣医師=5日、喜界町