鹿児島県瀬戸内町の教育委員会は5日、同町加計呂麻島でドローン(無人機)による戦争遺跡の測量調査を開始した。瀬相の「大島防備隊本部跡」(約30ヘクタール)と渡連の「安脚場砲台跡」(約46ヘクタール)の2地区計約76ヘクタールが対象。上空からレーザーを使った高精度な計測により、新たな遺構の発見や詳細な地形図の作成など戦争遺跡の全容解明に向けた基礎データの取得を目指す。瀬相地区を対象にした同日は、離着陸場所の瀬相港ヘリポートに関係者ら約10人が集まったが、雨天のためテスト飛行のみを行った。
使用するドローンはヤマハ発動機(本社静岡県磐田市)が林業支援向けに商用化したもの。搭載装置から毎秒75万発のレーザー(人体、動植物に無害)を照射することで高密度・高精度に地上の構造物や、道の判別につながる地面の凹凸などの3次元位置情報を測量できる。1平方メートル辺りの情報取得点数は3000点以上。計測は同社社員らが実施し、レーザーは上空約80メートルから照射する。
大島防備隊は奄美群島における旧日本海軍の中心部隊で1941年に瀬相で編成された。本部跡には戦闘指揮壕や弾薬庫、浄水場などの施設が残る一方、その多くは山中にあり人手による調査では限界があった。
町教育委員会の鼎丈太郎主査は「ドローンを活用することで、少ない労力で詳細なデータが取得できる。軍道の発見やさらなる調査に向けて、人が入る道の見極めにもつながる」と期待している。文献などから敵の戦闘機を機関銃で攻撃していた跡地なども存在するとみているという。
ドローンによる計測は1日約50ヘクタールほど可能で、天候がよければ8日までに両地区の計測を終える日程。得られたデータは調査目的に加えて、町の広報活動での利用や3次元データの活用に興味のある地元高校生への提供などが考えられている。

測量に使用するドローンを確認する関係者ら=5日、瀬戸内町瀬相