「方言は心の古里。残していきましょう」―。鹿児島県奄美市名瀬の県立奄美図書館で23日、大島地区「方言の日」関連事業のおはなし会があった。講師は「シマユムタ(方言)を伝える会」会長の鈴木るり子さん(72)が務め、奄美の昔話5作品を読み聞かせた。73人の参加者は幼少期に思いをはせたり、継承の大切さを感じたりして思い思いの時間を過ごした。
大島地区文化協会連絡協議会が2007年に定めた「方言の日」(2月18日)にちなみ開催。奄美各地では毎年、この日の前後にさまざまな活動が行われている。
宇検村生勝出身の鈴木さんは冒頭、「私のシマ(集落)では、昔話のことを『てぃき話』と言っていた」と説明。てぃき話は「むかぁし、あたんちゃんな(あったそうだ)」で始まり、「やぁーがっさ(もうこれだけ)」で終わるという。
語り手が一句語るごとに聞き手が「へぇ」と相づちを打つルールがあった時代も。また「昼にてぃき話をすると、目がはげる」「昔話は神々が現れる静寂な夜の世界につながる神聖な物語」という言い伝えも紹介した。
続いて鈴木さんは「ヒニャンガナシの伝説」「うばすて山」「真蟹(マガン)とさる」など5作品を方言で読み聞かせ、方言継承を呼び掛けた。奄美市名瀬(宇検村須古出身)の昇喜代子さん(86)も島唄で花を添えた。
奄美市名瀬(笠利町用安出身)の薗博明さん(91)は「母や祖母が使っていたシマユムタを思って目頭が熱くなり、いろいろな情景が頭を巡った。かさん(奄美大島北部)やひぎゃ(同南部)、群島各地の方言の違いも興味深い」と語った。
インターンで奄美を訪れている東京都出身で茨城大3年の野村香湖(ここ)さん(21)は「読み聞かせの内容はほぼ理解できなかったが、方言の継承の大切さを改めて感じた。祖父が使っていた江戸の言葉を思い出した」と話した。

方言で奄美の昔話を読み聞かせた鈴木るり子さん=23日、県立奄美図書館