400年の歴史に触れる 徳之島町=指定文化財の漆器に焦点当て講演

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鹿児島県徳之島町指定有形文化財(美術工芸品)の朱漆山水人物箔絵丸櫃(しゅうるしさんすいじんぶつはくえまるびつ)に焦点を当てた講演会が1月25日、町生涯学習センターであった。専門家2氏が講師を務め、聴講者は400年前に作られた漆器が示す琉球王朝やノロ(女性神職)との関わりについて理解を深めた。

15~16世紀の奄美群島は琉球王朝の統治下に置かれ、村落の祭祀(さいし)は王朝からの御朱印状(辞令書)で就任したノロが取り仕切っていた。丸櫃はノロの儀式に用いられる勾玉(まがたま)やかんざしなどの祭祀具を収める容器だったとされる。

この丸櫃は同町手々集落の深見家が受け継いできたもの。当時の暦で1600年を示す年号が記された御朱印状を伴っていたことから、約400年以上前に琉球王国で作られたと推察され、年代を特定できることから古琉球期漆芸品の一級資料とされる。

修復された朱漆山水人物箔絵丸櫃(右からふたと本体)=1月25日、徳之島町生涯学習センター

現在、町郷土資料館が保管しており、劣化していたため、2022~3年度にかけて町がふるさと納税や三菱財団文化財助成金を活用して660万円をかけて修復した。

講演会では元浦添市美術館長の宮里正子さんと、修復を手掛けた大西漆芸修復スタジオ(福岡県太宰府市)代表社員の大西智洋さんが講師を務めた。

琉球、東南アジアの漆器の研究者である宮里さんは同丸櫃の特徴について「箔絵、沈金などの装飾技法などは薩摩侵略以前の特色がある」と説明。「当時の漆器は王朝の権威を示すため外交の献上品として作られていた。薩摩支配後も大切に受け継がれてきたことが、王朝やノロの影響力を示している」と解説した。

国宝や重要文化財の修復も手掛けてきた経験のある大西さんは「これほど古いのに、余計な修復がされていない〝無垢(むく)〟な状態の漆器はまれ。後世にしっかり残したいという思いで取り組んだ」と作業を振り返り、「瀬戸内町にも同様の丸櫃がある。今回の修復を先例として他の地域の文化財保存につなげてほしい」と期待した。

 

琉球や東南アジアの漆器について説明する宮里正子さん(左)=25日、徳之島町生涯学習センター

 

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