鹿児島県の奄美大島沿岸で局所的にサンゴの白化現象が確認された。6~12日に調査を行った奄美海洋生物研究会の興克樹会長は「今夏は台風の接近がなく、海水温が高い状態が続いたためとみられる。今後も推移を注視する必要がある」と話している。
サンゴの白化は、共生する褐虫藻という藻類が失われることでサンゴの白い骨格が透けて見える現象。海水温の変化や強い日差し、水質汚染などのストレスによって発生し、白化状態が続くとサンゴは栄養源を失い死滅する。
奄美海洋生物研究会は調査で、奄美市名瀬の大浜海岸と同市笠利町の用安海岸、大和村の国直海岸の礁池内で白化を確認。いずれも海水温が上昇しやすく、日差しの影響も受けやすい水深1~2メートル以内のリーフ内で発生していた。
大浜海岸では、全体の9割以上の群体で褐虫藻が完全に抜けた状態だった。1998年の大規模白化を耐えた直径5メートルの大型ハマサンゴ群体も今回の白化で死滅していた。国直海岸では全体の9割以上で白化が見られ、うち半数が完全に白化していた。
22年の白化で多くのミドリイシ属のサンゴ群体が死滅した太平洋側の用安礁池でも、全体の7割程度のサンゴ(コモンサンゴ属、ハマサンゴ属)で色が薄くなる程度の白化がみられた。大島海峡では、ほとんどのシュノーケルポイントで色が薄くなる程度の白化が見られたものの、完全白化群体は全体の5%未満と少ない状態だった。
同研究会によると奄美大島では1998年以降、数年置きにサンゴの白化が発生し、白化に耐性を持った群体が生き残り礁原を優占してきているという。興会長は「白化したサンゴ群体のすべてが死滅することはないが、リーフが発達していて水温の影響を受けやすい東シナ海側で特に注意が必要だ」と懸念を示した。
台風が接近すると、海水温が2~3度下がり白化による死滅を軽減する効果がある。奄美海洋生物研究会は9月に奄美大島全域でサンゴのモニタリング調査や海水温のデータ分析を行う予定。