「ヨイヤー、ヨイヤー」「ワイド、ワイド」と勇ましい声とほら貝の音が鳴り響き、五穀豊穣(ほうじょう)と集落の繁栄を祈る「豊年祭」のシーズンが宇検村で幕を開けた。芦検、久志、屋鈍集落では8月12日、コロナ禍で中止が続いた同祭が4年ぶりに復活。お盆で帰省した人たちも加わり、各集落は熱気に包まれた。
芦検集落(133世帯、237人)では、まわし姿の力士がトネヤから宮道(ミヤミチ)を通って土俵入りする「フッジャシ(振り出し)」行列が盛大に集落に繰り出された。
例年、行列を成すのは40代までだが、今年は、コロナ禍担うことができなかった人たちの士気や低下した集落の活力を高めようと、50代、60代も加わった。
土俵では、赤ちゃんの「初土俵入」や満49歳を迎える力士の「上がり相撲」などが行われた。コロナの影響で今年が初の土俵入りとなった林湊翔くん(3)・翔飛くん(1)兄弟は祖父と共に入場。四股を踏む練習もしたという湊翔くんは「楽しかったけど四股はできなかった。来年は頑張る」とはにかんだ。
また、芦検民謡保存会と婦人会が、1982年に村の無形民俗文化財に指定された「芦検稲すり踊り」を奉納。36年に皇室の新嘗祭(にいなめさい)祭に献上する米の田植え祭りで踊ったのが始まりとされ、保存会会長の松井富彦さん(74)は「この3年間、集落以外の場所で踊る機会はあったが、地元で披露できることは格別の喜びがある」と話した。
豊年祭は集落の人たちが輪になり、チジン(太鼓)を打ち鳴らして唄い踊る「八月踊り」で締めくくった。区長の前田勝彦さん(69)は「コロナ禍で集落の伝統文化の継承が希薄化しないか不安だったが、祭りを通して集落に活気が戻り、住民の笑顔に感動もひとしお」と語った。宇検村では、約1カ月にわたり、全14集落で「豊年祭」が行われる。