映画って本当にいいものですね〜
この名台詞を知っている方も減ってきたのではないでしょうか。
プロデュースの仕事に携わってから年間で新旧含めて150本ぐらい映画を見るようになりました。「カメラを止めるな!」を皮切りにインディペンデント作品が注目される機会が増えてきてますし、ここ最近は本当に面白い邦画作品が多いですよ。最近見た「いなくなれ、群青」は青春群像とファンタジーを掛け合わせながらも、作品の世界に没入するカメラワークが素晴らしい作品でした。是非!
鹿児島県内での映画制作も増えていますね。昨年公開されたオレンジ鉄道を題材にした「かぞくいろ」、南大隅で撮影された「きばいやんせ!私」、つい最近9月にクランクインした薩摩川内の「大綱引の恋」と映画づいております。
そして我らが長島町「夕陽のあと」。
映画づくりって本当に大変なんですけど、終わったあとの達成感と喪失感が混じり合うなんとも言えないエクスタシーを孕んでいると思います。
ちなみに、何が大変かというと、映画にすることが大変なのです。
一口に映画と言っても、映画を撮影する場所それぞれに守らなければいけない道理があります。それと同時に、作り手の表現を作品に込めることが映画でもあります。それらを天秤にかけて最適な落とし所を探っていくことが映画づくりなのではないかと思います。
その天秤のバランスが崩れて、撮影地域側が満足するような作品になれば、ご当地映画と呼ばれるようなPR映画になってしまい、地元の人以外は置いてけぼりにされる作品になってしまいます。
翻って、作り手の思い通りの作品になれば、その地域から顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれません。
少し脱線しますが、TVや映画のフォーマットでは規制が多い、ということで最近話題になった配信ドラマがあります。当然公共放送では流せない作品ではありましたが、制約の無い作品というのもいかがなものでしょうか。僕は示唆の無い大味な作品だな・・・、と感じました。制約があるからこそ「そんな伝え方があるのか!」と作り手の表現力に対して、見る側の人たちが理解を示すのが映画という娯楽。ということで、映画というのはその制作過程で関わった方達の納得するポイントを模索し続けて完成する総合芸術であると思います。
話しが逸れました。「夕陽のあと」の制作の話しに戻しましょう。
映画の撮影がおこなわれる前までは町の皆さんに「本当にできるの!?」と幾度となく質問されたり、「映画ね。へ〜」と塩対応されてきました(笑)今では過ぎた話しなので笑えますが、準備真っ只中の自分にはまったく余裕がありませんでした(笑)
ただ、映画の撮影がじわじわと近づいてくると、長島町の中でも映画の熱が伝播していっていることがひしひしと伝わってきました。「いよいよですね!」こんな声がちらほらと聞こえ始めたのです。もしかしたら、自分が焦り過ぎていて、周囲の方に心配をおかけしていただけかもしれません。笑
いよいよ撮影期間に入ると、約2週間の期間を休み無しで撮影が進んでいきます。
すると、それまで映画と一切接点が無かった町の方達が、映画に興味を持って撮影現場を見に来てくれたりしていました。ありがたいことに、近所で撮影しているという理由だけで、差し入れをしてくださったり、暖をとれる場所を貸していただいたりと温かい心遣いの数々。本当に嬉しかったです。船上で撮影することになり、急遽船が必要になったときも快く船を出してくださった方もいたり、エキストラの数が足りない・・・と頭を抱えていた時もありましたが、撮影場所の公民館長が公民館放送で案内を出してくださると、あっという間にエキストラが集まったりもしました。
町の皆さんと共に映画を作っていきたい、と事あるごとに町の皆さんには説明をさせていただき、町の皆さんと発足した映画実行委員会が中心となって映画制作を進めてきました。そういった地道な活動が報われた気がしました。「夕陽のあと」が長島町で少しずつ受け入れられてきたんだなぁ、と実感することができた瞬間でした。
映画『夕陽のあと』
出演:貫地谷しほり/山田真歩/永井大/川口覚/松原豊和/木内みどり
脚本:嶋田うれ葉/音楽:宇波拓企画・原案:舩橋淳プロデューサー:橋本佳子/長島町プロデュース:小楠雄士/撮影監督:戸田義久/同時録音:森英司/音響:菊池信之/編集:菊井貴繁/助監督:近藤有希
製作:長島大陸映画実行委員会/制作:ドキュメンタリージャパン/配給:コピアポア・フィルム
2019年|日本|133分|カラー|ビスタサイズ|5.1ch
公式URL:yuhinoato.com