「農家になりたい!」若夫婦の夢を叶えた手厚い制度(後編)

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プロローグ


長年の夢だった『農家になりたい』という夢を果たした梅沢さんご夫妻。
お2人との話の中で、『志布志市でピーマン農家を営む人たちの約7割がIターン者』だという驚きの事実を知った。農業や集落活動を通して地域の方たちと密に繋がり、充実した日々を過ごしている梅沢さんご家族にとって志布志市という町はどのように写っているのか?お話を伺った。

インタビュー:満崎千鶴 撮影:高比良 有城 取材日2019年3月

家族の応援を受けて挑む、安心安全な野菜作り

梅沢さんご夫婦が志布志市に移り住んで早9年。群馬県出身の健太さんは移り住んだ当初は多少の不安もあったという。

「最初に感じたのは“言葉の壁”でした。話していても何を言っているのか正直さっぱり分かりませんでした。でも鹿児島は食べ物がとにかく美味しくて、こっちに来てから15キロ太りました(笑)志布志暮らし最高!」と満面の笑顔。

農家になることに対して両家の身内はとても心配したというけれど、3年という長い時間をかけて熱心に説得した結果、ようやく2人の思いを納得し応援してくれたそう。だからこそ、“絶対に成功すると心に決めて今がある”と話す2人の意気込みは本物だ。

「自分たちは新規就農なので、もともとは消費者だったわけです。だからこそ消費者の気持ちになって安心安全にはこだわりたい。子供達に食べさせる野菜はより安全なものがいいから、極力農薬は使わないようにしています。」と話す。梅沢さんご夫妻は志布志市で平成25年に立ち上げた“土着天敵研究所”のメンバーらと共に、“農薬を極力使わない安全な野菜作り”を模索した。
害虫の天敵となる虫を、畑に入れることで害虫を予防できるのでは?と考えたメンバーらは早速実証実験を行った。
6年間という歳月をかけて行った実験の結果、部会のみんなが極力農薬を使わず害虫を駆除することに成功し、実りある成果となった。

子供たちを守り、集落の未来を考える

梅沢さんご夫婦が志布志市へ移り住んできた当時、ご家族が暮らす田之浦地区の小学校、長男が入学時に田之浦小学校の児童数はわずか3人だった。

子どもを入学させるにあたりとても不安を感じたと話す由姫さんは、『田之浦小学校の今後を考える会』を学校やPTA、田之浦校区の方々と発足。

月に一度、公民館に集まり田之浦地区の未来について真剣に話し合っている。

「自然に囲まれたこの集落にはたくさん家があるわけでもないし、この地区に住んでいても他の地区の学校へ通っている子ども達も少なくありませんでした。私たちがそうだったように、生徒数が少ないことに不安を感じる気持ちが分かるからこそ、大人たちがみんなで真剣に考えないといけない時期にあると思いました。その時、無料タクシーを使って送迎を行うことで他の地区から生徒を呼び寄せる“特認校制度”というのがあるのを知りました。

まずはそんな制度があることをたくさんの人たちに認知してもらおうとみんなで保育園を回り、説明会を行いました。

その結果、最初の1年目は1人、2年目には3人、来年は21〜22人と年々子ども達の数は増え続けています。

ゆっくり静かに勉強したい…と希望する子や、田之浦地区の伝統行事、“神楽”を体験したいと…と願う子ども達が田之浦小学校へやってきてくれたことで、これまで異なる学年の生徒を一つの学級にまとめる複式学級だったけれど来年は解消されることになりました!」と目に映る明らかな成果を嬉しそうに話してくれた。

志布志暮らしを楽しむイロハ

健太さんは今、志布志市の消防団に入団したり集落活動に積極的に参加することで充実した毎日を送っているようだ。

「田之浦地区には神楽があって、2年に一度夜神楽を行っています。みんなで協力して同じものを作っていく活動はとても楽しい」と話す。

由姫さんは地域の方達と共に、大好きなフラダンスのサークルを作り夏祭りやクリスマス会で披露しているそうだ。

「大人も子供もみんなで楽しく踊っています。地元の人たちが私たちの踊るフラダンスをみて、とても喜んでくれることが嬉しい」と由姫さん。

チャンスがあればいつかやりたいと願っていた“民泊”もグリーンツーリズム協会から相談があったことと周囲の後押しもあり、しばらく行なっていたが子どもの成長に伴い残念ながら今宿泊の受け入れはお休みしているという。
しかし、ピーマンの収穫や農作業体験、採れたてのピーマンを使ったピザを石窯で焼いて食べるなど “ここでしかできない経験”の提供は行なっているとのこと。「宿泊の方も、もう少し落ち着いたらまた再開したい」と由姫さんは笑顔で意気込みを語ってくれた。

そして、お二人との話の中で何より驚いたのは現在96人いるピーマン農家の内、約70人はIターン者だということ。

「ここは、“農業やりたい”と思っている人は夢が叶えられる場所。自然があって海もあって山もある。病児保育も行なっているし子育てにも手厚い町。

子ども達が地域のみんなに愛されて育つ素晴らしい町です!」と話す梅沢さんご夫妻は一人前の農家として、とても頼もしく見えた。

梅沢さんの鹿児島暮らしメモ

かごしま暮らし歴は?

9年目です。

U•I•Jターンした年齢は?

ご主人27歳・奥様25歳

U•I•Jターンの決め手は?

志布志の農業公社の支援の充実

暮らしている地域の好きなところ

地域コミュニティーの暖かさとゆったり過ごせるスローな時間。そしてご飯が美味しい!

かごしま暮らしを考える同世代へひとこと!

私たちもまだまだ道半ではありますが、やる気と夢と情熱があれば夢は叶います!家族で仕事も地域のことも楽しみながら過ごすことが何よりも大事なことだと思います。

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