プロローグ
地元企業や生産者の熱い思に触れ、ECサポートを通して彼らを応援したいと鹿児島へ移住し会社を立ち上げた末永祐馬さん。鹿児島に来て6年、起業して3年目。末永さんが鹿児島で目指しているものとは。
インタビュー:奥脇 真由美 撮影:高比良有城 取材日2019年4月
鹿児島を拠点にしているからこそできるサポートを
父親の実家があった鹿児島県日置市に事務所を構えスタートしたLR株式会社。まずは日置市役所へ相談に行き、ふるさと納税の問合せ電話対応やウェブページ制作を請け負い始めた。3年目を迎えた現在は、日置市をはじめ串木野市や薩摩川内市、曽於市、中種子町など、鹿児島県内の9市町村のふるさと納税サイトの運営をサポートしている。スタッフは22名となり、商品のランディングページ制作や販売のコンサルティング、商品の受発注、お客様対応、梱包、発送業務、パッケージデザインや商品開発まで、まるごと請け負える体制を整えている。
「鹿児島は産地なので、皆さん“本当にいいもの”を良く知っていて、すべてにおいて妥協なく作る。だからすごくいい商品ができていると思います。それだけに、ネット販売はもっと伸びると感じています」
鹿児島の特産品や生産者に更なる可能性を感じている末永さん。それだけに、ウェブページを制作する際には、企業や生産者のもとへ直接足を運んでじっくり取材し、作り手の想いをしっかりとページに落とし込むことを心がけている。それは福岡や東京など大都市の会社ではなかなかできない、地元企業ならではの強みだ。
その甲斐あってか、パソコンが苦手で最初はウェブページ制作にピンときていない相手でも、完成したページを見てもらうと熱くなってくれたり、商品が売れると『すごくいいページができて、おかげで売れました』と連絡をくれることもあり、それがやりがいにもなっている。
そうやって県内各地へ足を運んでいる末永さんに、県内のお気に入りの場所や風景を尋ねてみた。
「それぞれに良さがあるのでどこも好きですが、いちばん好きなのは、生産者さんががんばっている風景。がんばっているみなさんが、自分たちがサポートすることで喜んでくれるから、もっとがんばっていこう、もっと広げていこうと思えます」
働き方や仕事内容の高水準化も目標
人や特産品の魅力に惹かれ鹿児島へ移住を決めた末永さんだが、土地柄としてもっとこう変わったらと思う部分もある。それは働き方や仕事内容の水準だ。これまで様々な地元企業や生産者と関わるなかで、それらが「開放されていない土地柄」と感じるときがある。
その点で自社を顧みたときにまず心がけているのは、働きやすい環境を作るということ。基本的に残業はなく、従業員が妊娠中である場合や子どもがいる場合、それぞれの事情に応じて時短勤務や在宅でのリモートワークなども取り入れている。また、現在、いちき串木野市と姶良市に支社を構えているが、それも近辺に暮らす従業員の通勤負担を減らすための配慮だ。
「給与水準も、できるだけ高くしていこうと頑張っています。仕事内容にしても、鹿児島などの地方の仕事は大都市の大手企業に流れてしまうことも少なくないですが、地方でも高水準の仕事ができれば、仕事を大都市に流す必要もなくなる。そんなふうに、地方で生まれる高いニーズにも地方で当たり前に応えられるようになったらいいなと思っています。」
その想いは『「誰もが次世代に誇れる社会」を目指して』という自社の理念にも通ずる。
地方でも誇れる仕事があること、それによって若者が大都市へ流出せず、地方が元気になること。LR株式会社が現在取り組んでいるふるさと納税のウェブサポートの先には、そんな持続可能な地方創生を見据えた理念があり、また、末永さん自身、まず自社でそれを体現し成長していかなければならないと考えている。
「末永商店」復活の構想も
「仕事が趣味みたいなもの」と言う末永さん。仕事が休みの日にはゆっくりと過ごすこともあるが、ふらっと仕事をしたり、お客さんが参加するイベントへ足を運んだりしているそう。そんな末永さんのもう一つのお気に入りの場所は「職場」だ。
「一緒に働いている人が皆さん尊敬できるので、そういうところで仕事ができるのは凄く素敵なことだなと思います」
前述の通り、本社はもともと祖父母宅だった建物であり、「末永商店」として店も構えていた場所。当時は駄菓子などが陳列され、店頭では豆腐を揚げ販売しており、地域の人に愛される店だったそうだ。末永さん自身も「祖母の作る厚揚げは大好きで、人生でいちばん好きな料理だった」と振り返る。
仕入れ先の豆腐屋はもうなく、今ではそのレシピも分からない。けれどこの場所は、いずれオフィスを移転させ、かつての商店のようなかたちで復活させたいと末永さんは考えている。更なる広がりを感じさせる末永さんのこれからのビジネス展開が楽しみだ。
末永祐馬さんの鹿児島暮らしメモ
かごしま暮らし歴は?
6年目です。
U•I•Jターンした年齢は?
22歳
U•I•Jターンの決め手は?
ごはんがおいしい。人があったかい
かごしま暮らしを考える同世代へひとこと!
目標を持って頑張る人をすごく応援してくれる土地柄。自分もいろんな人のサポートがあって今があります。